小回りの 中京・最終日
今週の日曜日には今年のG1レース第2弾の高松宮記念が行われる。このレースが春の中京競馬場でスプリントG1として施行されるようになったのは1996年からで今年で14年目を迎えるが、その前身である高松宮杯は夏の中京開催の2000メートルで行われていた看板レースで設立は1971年に遡る。第1回の勝ち馬がシュンサクオーで以降も一時代を築いた一流馬やファンの人気を集めた個性派が優勝している。
第1回シュンサクオー (飯田明弘騎手、小林稔厩舎) 第4回ハイセイコー (増沢末夫騎手、鈴木勝厩舎) 第5回イットー (簗田善則騎手、田中好厩舎) 第7回トウショウボーイ (武邦彦騎手、保田隆厩舎) 第11回ハギノトップレディ (伊藤清章騎手、伊藤修厩舎) 第18回オグリキャップ (河内洋騎手、瀬戸口厩舎) 第19回メジロアルダン (河内洋騎手、奥平真厩舎) 第24回ナイスネイチャ (松永昌博騎手、松永善厩舎)
書き出した勝ち馬8頭は当時の記憶や印象で選んだもの。少々個人的な趣味に走っている面があるのはご容赦いただきたいが、この高松宮杯は個人的に好きなレースのひとつだった。東京や京都の2000メートルでは善戦の域を出ない先行脚質の馬が平坦小回りの中京で一変するケースは少なくない。スピードの絶対値がモノを言うコース形態に着目して馬券作戦で快哉を叫んだこともあるが、完敗して歯ぎしりしたこともあった。第5回の勝ち馬イットー、その娘で第11回の勝ち馬ハギノトップレディの母娘制覇も懐かしいが、ダービーに出走できぬ無念をレコード駆けで晴らしたオグリキャップの異次元の強さは身震いするほどだった。このレースが1200メートルに変更された当初は不満だったが、春秋にそれぞれスプリントG1を設けたことでこの部門の年間最優秀馬の選出基準が明快になった。その点においては変更も仕方なかったかなとの思いもある。
中京競馬場が今週限りで改修工事に入る。聞くところによると芝、ダートともに1周が長くなり、直線には急坂ができるという。つまり、これまではなかった芝1400、1600、ダートの1200、1400、1800メートルのレースが施行可能になるという。小回り特有の枠順の有利不利がある程度解消され、単調だったレース形態が多様化する。それに加えてレースの安全性確保にもつながるという意味ではいいことだが、この改修は個々の競馬場の没個性化につながりそうで寂しい。馬場の広い東京や京都、阪神では結果を出せなくてもスピードを生かせる中京ならどんな相手にも負けない。そんな馬がいて、そんなコースがあるから楽しめるのだが。 さて高松宮記念である。ここまでの流れからすると逃げ馬を狙うべきなのかもしれないが、生来、論理的な組み立てが苦手な私の頭脳が絞り出したこの1頭はサンカルロ。ここ数年、レベルが下がっていると感じる短距離界だが、今年も格、実績で突出した存在が見当たらない。週刊誌でこのレース関連の原稿を書いていてふと閃いたのがこの馬である。既成勢力にこれといった馬がいない今年のメンバー構成を考えると1200メートル未経験というのが逆に魅力にもなる。気性、レースぶりから距離短縮で秘めた資質が開花すると読んで馬券の軸にする予定を組んでおり、できれば日曜夜は的中の余韻に浸って旨い酒を飲みたい。
最後にお知らせをひとつ。都合により来週のこのコラムは休ませていただきます。次回の更新は4月7日となりますのでどうぞご了解ください。
競馬ブック編集局員 村上和巳