82年生まれ19歳の川島信二騎手が、デビュー2年目に入って華やかな脚光を浴び始めた。初年度に挙げた10勝を僅か3カ月足らずで上回っている。もっとも、10月の後半以降から急速に勝ち鞍を増やしていたものだから、一様に数だけ比べられないかも知れない。とにかく福島や中京等の裏開催の方へ回って騎乗機会を増やすことにより技術に磨きがかかっている。さすがに主場(京都、阪神)での騎乗となるとまだまだ数の揃わない日もあるものの、6頭ぐらいを確保できているのは信頼度アップの証。3月2日からの中京戦では出走奨励金の交付される8着以内へ入線する比率が目立って高まっており、いわゆる“銭の稼げる騎手”へ仲間入りしてきた。
彼を何度か起用していた五十嵐師は「礼儀正しく、そして明るい。最近の若手が疎かにしている調教やレース後の様子伺い等もきちんとやっておるし、細かな気配りも行き届いており好感が持てる。体が空いていれば乗ってもらいたいのだが、何せ売れっ子だから逆に断わられることの方が多くて……」と苦笑の態。所属する安藤厩舎の番頭さん安藤清助手に言わせれば「まだキラッと光るモノがない。レースぶりの粗さもしばしば目につく」と激辛の評価だったが、多分に社交上の応対語みたい。「元阪神の野村監督がよく言っていた。新人を育てるのは愛情と忍耐、更にある程度の犠牲も必要とか。その通りです。うちの厩舎の皆も懐を深くして見守っています」が本音であろう。
23日より通算21勝超で規定により3キロ減から2キロ減へ変更された。1キロの違いは大きく、次の段階へ進む新たな障害であり試練である。今年は乗り替わりによる勝利の圧倒的多さに目を見張らせるものがある。また、逃げあり、差しあり、追い込みありと、馬に合わせた変幻自在型。久々に天才福永洋一さんタイプの騎乗スタイルを身につけた異才に出会った思いがしている。今後の成長が楽しみだ。今の内容が一過性のものでないのなら、2年も3年も先のことでなく、この1年の内で本物を認識させてくれるはずだ。
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