春よ来い
冬来たりなば春遠からじ。寒い冬が続くと春の到来が待ち遠しくなる。冬の始まりの時にはあまり感じないが、目の前に春がやって来ているこの時期になると一層、その思いが強くなってしまう。まだ、油断はできないが、開催中止に再投票があった関西圏に比べて関東圏は順調に開催が進んだ厳冬期の1回東京競馬が終了。今年第一弾のG1フェブラリーSは昨年に続いて4歳馬が勝って世代交代を印象付けた。数年前まではダートのG1路線では高齢の実績馬がデンと構えていて勢いだけでは通用しないという時代もあったが、今年のゴールドドリームなどを見ると急逝したゴールドアリュールの後継という意味もあるが、更に活躍が期待できる将来性十分の素材で、芝を諦めてダートへという日本競馬特有の考え方も変わってきたのかもしれない。
残念だったのは2着のベストウォーリア。勝負どころで包まれて勝ち馬にスッと離されながらインからジワジワ詰め寄ってあと少しと思わせながらまた届かず。近走は5戦連続2着。中央のG1制覇はお預けとなった。これでこのレースへの挑戦は4回目。着順も内容も一番、良かったのでもう一回、チャレンジしてほしい。ところで私が同馬に期待した根拠のひとつがこの開催の馬場状態。モーニンが勝った昨年が驚異的なレコードタイム。そこで割を食ったのがパワータイプのベストウォーリアと見て良馬場なら違うはずと考えたのだ。開催を通して雨の日がなくすべて良馬場だったのはここ10年でも今年だけ。ダートの含水率が1%台だったのが5日と異常なほどの乾燥が続いて現実に最終日のメインレースも砂が真っ白に見えるくらい乾いていた。
ところで冒頭で書いたことわざのような言い回し。俳句の一種か中国の漢詩のような雰囲気が漂うが、原典はイギリスの詩人シェリーが書いた詩の一節で直訳すると「冬が来るなら春が遥か後にあるだろうか?」となるらしい。日本で言えば冬から春へ移る時期にちょうど学生の受験シーズンが重なるだけに頑張って冬の時期を耐え抜けば春がやってくると説教的な意味に捉えられがちだが、本来はもっと自然に冬の後には黙っていても春がやってくるということを言いたかったようだ。この文章を書いている時点でも窓外では冷たい北風が吹き荒れているが、人間が何をしようが、雨が降って南風が吹いて更に花粉も飛んでくる春はもう間近。来るべきクラシックレースの展望でもしながらその時を待ちたい。 美浦編集局 田村明宏
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