・ナムラマース ・ヒカルカザブエ ・マイネレーツェル ・マキハタサイボーグ
・アーリーロブスト ・トゥリオンファーレ ・ナカヤマフェスタ ・ハイローラー ・フサイチナガラガワ ・モンテトウルヌソル
12月28日が有馬記念で新年の競馬が1月4日からスタートするという過去に記憶にない慌しい年末年始となったため、ゆく年を惜しむ間もなければくる年を迎える心の準備もできないまま時間に追われて気がつけば1月中旬になっていた。先週にこの原稿を更新しなかったのはそういった日程の都合と職務上の何件かの問題を抱えていたからなのだが、そんな退屈なことをくどくど説明するのもあまり意味のないことなのでここでは省略するとして、今年もこのコラムでは例によって気の向くままに好き勝手なことを書かせてもらうつもりでいる。物好きでなおかつ時間に余裕のある方がいらっしゃれば気楽にお付き合いいただきたい。
さて、週刊競馬ブックの一筆啓上でも取り上げたが、1月6日にJRAから発表された2008年の年度代表馬と部門別最優秀馬について感じたことを書いてみたい。まずは年度代表馬部門。年間を通してコンスタントに出走してG1を2勝したウオッカか、それとも年間僅か3走でG1は1勝ながらすべてのレースで極めて高いレベルの走りを見せたダイワスカーレットかで評価が分かれた。勝利度数と競馬に対する貢献度という意味ではウオッカが上位であり、示した能力の高さという意味ではダイワスカーレットが優っていた。どの部分に重きを置くかが票の分かれ道となった。角居勝彦調教師とは交流がないが、松田国英調教師とは彼が調教助手の頃から付き合いがある私。投票に際しては“李下に冠を正さず”の精神を貫こうと考えていたが、一度だけの直接対決で勝っていることを大きなポイントと捉えてウオッカに一票を投じた。
最優秀4歳以上牡馬の部門ではジャパンCを制したスクリーンヒーローが圧倒的な票を集めて選出されたが、私が投票したのはカネヒキリ。JCダートと東京大賞典の2勝はスクリーンヒーローを凌ぐ成績であり、私自身はこの馬が最優秀馬に選出されるものと考えていた。投票結果について考えてみると、古い世代には旧態依然としてダート競馬軽視の風潮があるのか、それとも東京大賞典の結果が出る前、つまりJRAの全日程が終了した段階で無責任に投票を済ませてしまったのか、はたまたこの馬が4歳以上牡馬の部門に該当することに気付かなかったのか。いずれにしてもこの結果については納得できなかった。他にもJRA賞そのものの意味を理解していないのではないかと思われる記者投票が散見されたのは残念である。
「最高裁判所裁判官国民審査のように、ファンによる信任投票のようなものがあれば、理解しかねる票を投じた記者を排除できるのにと真剣に考えてしまいます」
これは1月12日発行の週刊競馬ブック『ファンのページ』に掲載された投稿の抜粋だが、毎年、JRA賞が発表された直後には同じような手紙やメールが次々と編集部に届いており、その気持ちはよく判る。有馬記念や宝塚記念ならひとりのファンに戻って好きな馬の名前を書いて投票すればいい。しかし、JRA賞は毎年繰り広げられる馬たちの過酷な戦いを可能な限り正確に記録してその結果として選ばれた代表馬を後世に伝えるという重責を担っている。繁殖に上がった牝馬が有力種牡馬との交配を求めるとして、種付け希望頭数が予定を超えた場合には血統、現役時代の成績、JRA賞受賞経験の有無などをもとに篩にかけられるのが一般的。つまり、投票結果は競走馬の引退後の生活をも左右することになるのであり、そこに個人の好き嫌いや趣味が介入すべきではない。「これが無難だろうから」とただ漫然と馬名を書き込んだり「昔に比べると魅力を感じる馬が少なくなって困る」とボヤきながら“該当馬なし”を選択しているような見識のない記者や競馬に対する熱意が薄れている記者はすみやかに投票資格を返上すべきではないだろうか。
競馬ブック編集局員 村上和巳