・エフティマイア ・カワカミプリンセス ・トールポピー ・ビエンナーレ ・ベッラレイア ・ポルトフィーノ ・ムードインディゴ ・リトルアマポーラ ・レインダンス ・レジネッタ
麻生総理大臣が「ホテルのバーは安くて安全」と発言したことで、かなりのマスコミが庶民感覚を理解していないといった論調の批判的な報道をしている。しかし、一国の宰相たるものが居酒屋で延々と酒を飲むわけにはいくまい。店側にすれば必要以上の神経を遣うし本来の雰囲気も壊れてしまう。また、SP連中にしてもまともな警備などまずできまい。行きつけのバーが帝国ホテル内にあるというのはごく自然の成り行きとも思える。国会議員をめざした最初の選挙で壇上に上がっての第一声が「下々の皆さん」というアンビリーバボーな言葉で、集結していた支援者を一瞬にして顔面蒼白にさせたという凄いエピソード(あくまで噂だが、いかにもそれらしい)を持つ麻生さんのこと。生家が九州の富豪で庶民とはかけ離れた生活を送ってきた人物に庶民感覚を理解しろと望むこと自体に無理がある。私も料亭やボックスに坐ると横に落ち着いた女性がつくような高級店よりもマイペースで飲めるバーの方を好んで利用しているが、もちろん帝国ホテル並みのG1ではなく、地方都市のどこにでもあるシティーホテル、つまり自分の資金でやり繰りできるオープン特別か条件戦レベルの店である。しかし、馬券に負けた日などは経費不足が明らかなので外出を諦めて自宅でチビチビやるしかない。最近、このパターンが圧倒的に多くなっているのは情けないが、これが庶民のあるべき健全な姿なのだから仕方がない。
先日、社会保険庁から葉書が届いた。以前に届いた“年金特別便”に対する回答が届いていないので必ず返事をして欲しいというのがその内容。年金問題に無関心でいられる立場ではないが、目を通して事実関係を確認したあとで一旦机の引き出しに保管したまま郵送するのを忘れていた。書類の記入すべき項目を埋めたあとで少々気になることがあって専用ダイヤルに電話を入れると話が意外な方向へ展開した。「村上様の年金記録に“もれ”がある可能性が高いので、お手元の書類をじっくりご確認ください。ちなみに、昭和○○年の春から秋にかけてなにかお仕事はされていましたか?」との質問に当惑した。30年以上も前のことを瞬時に思い出せる訳もなく、ちょうど競馬に取り憑かれた頃で馬券代稼ぎに家庭教師を掛け持ちしていたことしか頭に浮かばなかったが、「場所は大阪市内の○○です」と告げられた途端にある記憶が戻った。社会保険庁の照合作業によって宙に浮いていた私の年金記録の一部がひとつの線でつながったのはいいが、記憶から消し去っていた当時の自分の生き様までが鮮明に甦ってしばらくは頭痛がした。人間の記憶というのは実に便利にできていて、忌まわしい過去や思い出すのも躊躇われるような事例はいつの間にか抹消され、生きて行く上で都合のいい楽なデータだけが選別されて残っているようだ。だからこそ幾つになっても競馬に熱中できるのかもしれないが(汗)。
第2回ジョッキー・マスターズで河内洋調教師が連覇を達成した。肩、腰、膝でつくり出す三角形がなんとも美しい独特の騎乗フォームや極端に短い鐙は昔のまま。4角では荒れた内を嫌って馬場状態のいい外目に持ち出す沈着冷静な騎乗ぶりにも痺れた。自厩舎の調教にはいまでも跨り続けており、併せ馬をするときには必ず先着する馬に乗っている同師について乗りやすい楽な方の馬を選んでいるという声も周囲にあるが、個人的には勝負に対するこだわりがいまでも身に染み付いているのだと信じたい(笑)。現役時代はできるだけ余力を残してレースに勝つことをテーマにしていて、勝利のコメントも敢えて控えめに終始していた。その背景にはライバル陣営に必要以上の警戒心を与えまいとする心理があった。つまり、目標とするレースに出走するまでは戦う相手に手の内を曝け出すべきでないとする信条が彼の人間性を物語っていた。そんな男だからV2のインタビューでも「現役復帰?もう誰も乗せてくれんよ」と言葉少なに笑っただけ。派手なガッツポーズもなかったが、同時代に同じ現場の空気を吸っていた人間としては嬉しい勝利だった。こうなったら3連覇めざして来年も頑張ってもらいたい。そして、他人から勇気をもらってばかりいないで、私自身も馬券の連敗記録をいい加減にストップさせなくてはいけない。もうそろそろ年末調整の時期でもあるのだから。
競馬ブック編集局員 村上和巳
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