・エアシェイディ ・キングストレイル ・シャドウゲイト ・スウィフトカレント ・マイネルキッツ ・マツリダゴッホ
・オウケンブルースリ ・スマイルジャック ・ディープスカイ ・ブラックシェル ・メイショウクオリア ・ヤマニンキングリー
「競馬は児童教育に通じるという持論があるんです。いや、通じるというよりも共通した部分が多いと考えています。馬券を買うにあたっては各馬の調教、厩舎談話、これまでの成績といった様々なデータをひと通りチェックしますよね。古馬の場合は過去の成績に目を通すことで各馬の能力をかなり正確に割り出すことができますが、キャリアの浅い若駒の場合は未知の部分が多くなります。調教は地味でも実戦へ行って走る馬もいれば距離が延びることをキッカケにしてガラッと変わる馬もいます。つまり、個々の馬の本質やポテンシャルがまだ掴みきれていない時期に、血統やデータを分析することで秘めている才能や適性を自分なりに探る。これが穴馬券を的中させるための秘訣になります。児童教育の場合も同様で、普段は自己主張をしない目立たない子供たちの埋もれている才能や可能性を模索して、それを引き出してやるのが我々の仕事なんです」
先日、小倉へ出向いたときに40代前半のK氏と飲んだ。初対面にもかかわらず会話が弾んだのは競馬という共通の話題があったから。思い出の馬がテンポイントで競馬に関心を抱いたのは小学生の頃であり、在籍した教育大学の卒業論文のテーマが競馬だったというのだからまさに筋金入り。教師の立場で競馬好きを公言して問題は起きないかと型に嵌った質問をしてみたところ、返ってきたのが上述のコメント。この人物が競馬好きなのは周囲によく知られているそうだが、それに対する批判の声はないという。子供たちと二人三脚でひたすら前へ進もうとするその生き様が周囲に理解されていればこそである。「馬も人間もなかなか思い通りの方向には進んでくれませんが、数十回に一回でも結果を出してくれたときには言葉で表現できないほど歓びがあります」と話していた彼。一緒に酒を飲みながら会話をして感じたのは、子供たちに対して限りない愛情を注いでいるということ。教育制度が荒廃しているいまの時代にこんな先生と巡り合える生徒は数少ない。
4月に入社した赤塚俊彦、安中貴史、田村潤、羽生佳孝の新人記者の研修期間が間もなく終了する。今年の4人に対して新人教育係としての務めを満足に果たせなかった点を反省しているが、その分以上に山田、坂井、三浦といった先輩記者が根気強く細やかに彼らを指導してくれた。いくら競馬好きな人種が集まったとはいっても所詮は大学を出たばかりの世間を知らない若者たち。常識が通用しない特殊な組織で早朝から深夜まで業務に追われ、戸惑うばかりの日常だったはずである。それを考えれば4人そろってよくここまで頑張った。当初は文章を書くことも覚束なかった彼らだが、最近はいっぱしの記事を書くまでに成長。先日も4人のなかのひとりの原稿を見て一人前になったなと実感した。札幌開催の終了とともに赤塚と安中は美浦入りして関東スタッフとなり、残る田村と羽生はそのまま栗東に居残って仕事を続けることとなり道は別れる。
ここまでは新人記者として4人ひと組で動いていたが、これからが本当の意味でスタートラインにつくことになる。それぞれが競馬記者としての資質を磨きつつ真っすぐに成長して欲しい。これからの時代の競馬を活気づけられるのは若者たちしかいないのだから。K先生ほどの愛情や熱意を持ち合わせていない私だが、今後も話し相手ぐらいにはなってやりたい。金銭や異性に関する悩みは答えられそうにないが、それ以外の問題だったらいつでも受け付けるから相談しておいで。
競馬ブック編集局員 村上和巳
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