肩の下まで伸びた真っすぐの長髪にサングラス。見慣れたスタイルでレオン・ラッセルがステージに登場したのは6時半。寸前に予約席に滑り込んだ私はビールをひと口流し込んで思わずスタンディングオベーション。他の観客が着席したままなのは不満だったが、初めての場所でひとりだけ浮きまくるのも不本意。やむなくゆっくりと席に腰を戻した。オープニングから数曲はブルース、R&B特集。途中で『Georgia On My mind』が流れたときには少々戸惑ったが、キーボードを弾き倒しながらエネルギッシュに歌いまくる姿は70年代のシーンそのまま。髪も髭も真っ白になったが、懐かしい“ギョロギョロ声”はもちろん健在だ。
1時間ほど経過してからは昔日のヒットメドレー。エリック・クラプトン、ジョージ・ハリスン、ボブ・ディランといった絢爛豪華な顔ぶれが揃った1971年(ヒカルイマイがダービーを制した年)のバングラディッシュ難民救済コンサートで、そんな彼らを従えて兄貴格のレオンが延々とヴォーカルを務めたのが知る人ぞ知る『Jumping jack flash』。この曲のイントロが流れると周囲は一気に盛り上がる。そして数曲後、ギター、ベース、ドラムの各奏者をステージから降ろしてシンセサイザー担当者と二人きりになった段階で次の曲が読めた。『Super star』と同様にカーペンターズがカバーしたあの名曲『A Song for you』である。至上のラヴソングを囁くように口ずさむ66歳の老ミュージシャンの歌声は静寂に満ちた会場に染み渡った。