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最優秀2歳牡馬ゴスホークケンが春の目標をNHKマイルCに決めたこともあるのだろうが、今年の牡馬クラシック戦線は傑出馬不在でレース毎に重賞の勝ち馬が変わっている。弥生賞を勝ったマイネルチャールズが牝馬も含めたこの世代最初の重賞2勝馬だというのがそれを如実に物語っている。この馬については“華やかさに欠けてアピール度が低い”とか“他馬を圧倒する強力なセールスポイントがない”といった声もあるが、450〜60キロ台の中格ながら重心の低いフォームが目につき、馬込みを苦にせず競り合いにもひるまない勝負根性もある。中山の2000メートルを3連勝中でもあって今年の皐月賞はこの馬が中心になりそうだ。その昔は“速い馬が勝つ”と言われた皐月賞だが、終始外々を回ってでもアッサリ差し切ってしまうような突出した能力の持ち主がいない限り、本来は“流れに逆らわない上手なレースができる馬”に向くレースでもある。スピードだけで押し切るほど甘くなく、かといって末脚の破壊力だけで勝負してはとても届かない。完成途上の3歳春に中山の2000メートルで力を出し切るのはそれだけ難しいということでもある。
牝馬戦線では最優秀2歳牝馬トールポピーが桜花賞に向けて順調なステップを踏み出した。今年の緒戦となったチューリップ賞ではエアパスカルに逃げ切りを許したが、レース内容は悪いものではなかった。ライバルと目される同じ角居勝彦厩舎の良血ポルトフィーノがアーリントンCで意外な脆さを露呈したこともあり、今年の桜花賞はこの馬が主役を務めることになるのだろう。このトールポピーも飛び抜けて強いというイメージはないが、470キロ前後で全体にユッタリした造りの馬体からしてまだ伸びる余地は十分。追って確実に差を詰めるレース運びはこの時期の3歳牝馬とは思えないほど安定しており、このあたりはマイネルチャールズと共通している部分でもある。阪神がリニューアルされて幅員の広い外回りコースが誕生したのは2006年の暮れであり、この新コースで行われた桜花賞はあのダイワスカーレットが勝った昨年の一回を数えるだけ。その結果だけで断言はできないが、この一年間に行われた阪神外回りのマイル戦を振り返ると、以前の桜花賞よりも出入りが少なく流れが落ち着きがち。つまり、スタートしてすぐに2コーナーを迎えるためにポジション争いが激化していた旧コースとは本質的に違うレースになっている点を改めて頭に入れておきたい。
誰でも知っているレベルの話をくどくど書くのはここまでにして、最後に個人的に注目している馬を挙げておきたい。まず牡馬ではモンテクリスエス。基本的に大型馬は好みではないし体を持て余してフラフラしている若さも気になるが、500キロを遥かに超える馬にしてはバランスが取れており、使う毎に走りに軽やかさが出てきているのもいい。本格化するのは秋以降になるかもしれないが、関西で久しぶりに見たモンテの服色がなんとも懐かしく声援を送りたくもなる。牝馬では馬体の印象がないまま取り上げる軽率さに目をつぶってハイエストホワイトを指名したい。僅か1戦のキャリアだが、小倉の新馬戦の勝ちっぷりにポテンシャルの高さを感じた。この原稿を書いている時点でこの2頭が今週のどのレースに使えるかは判らないし、それなりに人気するのは間違いなさそうだが、無事に出走してくるようならオープンでも自己条件でも狙い撃ちしようと決めている。 上記の1勝馬2頭が本番の出走権を獲得できず特定の狙い馬がいなくなった場合についても考えてみた。レースは生き物であり、また勝利の女神は気まぐれでもある。マイネルチャールズやトールポピーといった差しタイプが人気を集めるのなら、逆転の発想で先行、好位差しといった比較的前につけてロスのない競馬ができそうな組のなかから好みの馬を探すことになるだろう。この場合には中山、阪神を問わずにまず内枠が狙いであり、勝ち気にはやるよりは枯れた騎乗ができる冷静なジョッキーが跨っていることが望ましい。
競馬ブック編集局員 村上和巳
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