・アサヒライジング ・アドマイヤキッス ・ウオッカ ・スプリングドリュー ・ダイワスカーレット ・デアリングハート ・ディアデラノビア ・フサイチパンドラ ・レインダンス ・ローブデコルテ
今年も残すこと2カ月弱となり、年度代表馬及び部門別最優秀馬のタイトルの行方が気になってきた。年度代表馬について考えてみると、現時点ではドバイデューティフリーと宝塚記念を勝っているアドマイヤムーンが戦績で一歩リードしているように思えるが、天皇賞春秋制覇を果たしたメイショウサムソンも有力馬の一頭。この馬の場合はジャパンCから有馬記念のローテーションが有力で、更に勝ち星を積み重ねればこちらが選出される可能性も十分ある。一方のムーンの場合はこの後のレース選択が難しい。サムソンと同様のローテーションになるのか、それとも香港遠征を選択するのか。いずれにしても、年度代表馬のタイトルを確実なものにしたいならばもうひとつはビッグタイトルを手中に収めておきたいところだろう。年内で引退が確実なムーンといまが充実期と思えるサムソン。現在のところこの2頭の直接対決は4度あってサムソンの3勝(皐月賞、ダービー、2007年天皇賞・秋)1敗(2007年宝塚記念)だが、今年に限ってみれば1勝1敗の五分。できるなら年内にもう一度は同じ舞台で戦う姿を見たい。もちろん、双方がベストの体調でとの条件はつくが。
3歳牝馬世代のタイトル争いも熾烈である。現在のところはJpn1を2勝のダイワスカーレットが有力とされているが、そうなると牝馬の身で64年ぶりにダービーを制するという歴史的快挙を達成したウオッカに対しては特別賞でお茶を濁すことにもなりかねない。もっとも、この2頭はエリザベス女王杯で改めて対決するわけだし、ウオッカの場合はジャパンC挑戦のプランもあると聞く。年内に出走するレースをすべて勝ち続ければウオッカが最優秀3歳牝馬のタイトルを獲得するのはもちろんのこと、年度代表馬に選出される可能性だって残されている。そう考えると今年のエリザベス女王杯は例年以上に目が離せないレースとなってくる。ちなみにこの2頭の直接対決は3度あって、ダイワスカーレットが2勝1敗と勝ち越しているのはご存知の通り。
今年の3歳牝馬は史上最強との声が挙がっている。春はNHKマイルCをピンクカメオが制し、ダービーはウオッカが勝った。そして秋には古馬混合のスプリンターズSではアストンマーチャンが優勝。その勢いはとどまるところを知らない。たしかに3歳の女馬が牝馬限定戦以外のG1(Jpn1)でこれほどの成績を収めた年は過去に記憶がない。それだけに今年の3歳世代の強さは史上最強と呼べるのかも知れないが、裏返せば牝馬に翻弄され続ける牡馬のレベルの低さも浮き彫りとなってくる。4回京都および4回東京開催が終了した段階で秋の重賞戦線を振り返ると、古馬混合戦で3歳牡馬が勝ったのはシリウスS(ダート・2000メートル)のドラゴンファイヤーと富士S(芝・1600メートル)のマイネルシーガルの2頭だけ。ともにG3での勝ち星でしかないのは寂しく、皐月賞馬ヴィクトリー、菊花賞馬アサクサキングスの今後の活躍に期待したいものである。
競馬マスコミではよく“最強世代”という言葉が使われる。長い間競馬を見続けていても競走馬の世代間のレベル差を測るのは難しいが、個人的な印象ながら強さを実感したのは1973年生まれと1995年生まれの世代。どちらの世代も3歳(当時の年齢表記では4歳)にして有馬記念で年長馬を一蹴し、古馬になってからもG1戦線で他世代を圧倒した。1973年生まれの代表馬はトウショウボーイ、テンポイント、グリーングラスであり、1995年生まれの代表馬はグラスワンダー、エルコンドルパサー、スペシャルウィーク。前者の世代は有馬記念を3勝、後者は2勝、記録にも記憶にも残る世代だった。振り返ってみると3冠馬が誕生した世代は総じてレベルが高くないと思えるが、相手に恵まれて3冠馬が生まれたと考えるよりは、成長期に同期のライバルたちとの身を削るような戦いを経験することなく、絶対的な能力差を武器にして余力で3冠レースに臨めたのが大きかったのだろう。
競馬ブック編集局員 村上和巳