・アイルラヴァゲイン ・アグネスラズベリ ・アルーリングボイス ・オレハマッテルゼ ・キョウワロアリング ・サンアディユ ・フサイチリシャール
・インセンティブガイ ・ヴリル ・カンファーベスト ・キングストレイル ・マイケルバローズ ・マイネルシーガル
9月1日、土曜日。広島カープの前田智徳選手が中日ドラゴンズとの17回戦でプロ野球史上36人目となる通算2000本安打を達成した。その昔、落合博満やイチローをして「天才というのは彼のようなバッター」と言わしめた好打者で、その美しい打撃フォームにはテレビで見ているだけでも引きつけられた。36歳にしての2000本安打達成は彼にすれば遅過ぎる気もするが、二度にわたるアキレス腱断裂の大怪我を克服してのもの。以前の流れるような柔らかいスイングから下半身への負担を軽減するコンパクトなスイングに切り替えての記録達成には怪我と戦い続けた彼の歴史が語られている。“職人”とも“侍”とも呼ばれる前田選手はマスコミ嫌いとしても知られており、今回の記録達成についての取材申し込みのすべてを断ったという。「チームが下位に低迷している現実を考えると、個人記録で浮かれてはいられない」というのがその理由と聞くが、求道者としてひたむきに生きる彼らしさが伝わってくる。取材記者時代にレース直後の騎手インタビューが好きだった私とすれば一度は取材してみたい人物だが、初対面で生のコメントを引き出すのは至難かもしれない。それはともかくとして、前田智徳選手の快記録達成には一野球ファンとして拍手を送りたい。
同じ9月1日、弊社編集部もささやかな話題で盛り上がった。入社3年半の坂井直樹記者がKBS京都テレビの競馬中継に初出演したのだ。身長180センチ、体重100キロで胸板の厚い、まるで陸上の短距離ランナーのような体躯だが、甲子園で優勝経験のある高校の野球部に所属していたという割には体育系の匂いのしない若者でもある。通常業務では当日版や週報のメインレースの本文を担当しており、パソコンを駆使したデータ処理にも秀でているオールラウンダー。唯一問題なのは現場嫌いで取材が苦手なこと。そんな坂井がテレビカメラの前でどんな言動をするのか父親のような心理で見守ったが、落ち着いた様子で司会者の質問に応じる姿には周囲から「さすが主任」の声が飛んだ。ちなみに“主任”というのは彼が入社して1週間後についたニックネームで、先輩をはるかに凌ぐ落ち着きやとても年齢相応には見えない容姿から生まれたもの。「出てきました。あまりにテンパってて自分でも何を言ってるのかさっぱりわかりませんでしたが」と本人からメールが届いたが、どうしてどうして立派なメディア初デビューだった。自信というのは成功体験の積み重ねによって生まれるもの。今後もキャリアを積み、週報のインタビュー記事等にも積極的に挑戦して欲しい。
そして、これも9月1日の夕方。JRAから『限定的な入退厩について』というお知らせが届いた。その主旨は、9月4日から美浦および栗東トレーニング・センターにおいて入厩を開始(札幌、新潟、小倉、函館競馬場においては入厩は行わない)、退厩に関しては札幌、函館競馬場以外のJRAの施設で最大限の防疫措置を行ったうえで、限定的に実施するというものだった。インフルエンザが完全終息するまでにはまだまだ時間が必要なのは当然であり、牧場での待機を余儀なくされた組やトレセンから退厩できなかった組のなかには調整面での誤算が生じている馬も少なくないだろう。そう考えると今回の限定的な入退厩開始だけで手放しで喜べるものではないが、少なくとも秋競馬開催に向けてメドが立ったことには安堵した。2回小倉初日の台風、新潟の地震、そして馬インフルエンザの発生と続いた今年の厳しい夏もようやく終わろうとしている。間もなく訪れる秋こそは心静かに競馬を愉しめる季節であって欲しいと思っている。
競馬ブック編集局員 村上和巳