・コスモマーベラス ・サンレイジャスパー ・シェルズレイ ・スプリングドリュー ・ソリッドプラチナム ・ディアチャンス ・ヤマトマリオン
6週連続のG1(実際は大半がJpn1)開催がなんとか終了。やれ週刊誌だ当日版だ、そして増刊号だとバタついたが、ひと区切りついた。安田記念の翌週は本来なら束の間の休息となるはずだったが、思い通りに運ばないのが現実というもの。週初めからあれこれ問題が発生。結局はここ数週と変わらぬ慌しい一週間となった。
6月6日、水曜日。9時半に出社して通常業務がスタート。まずは週報用厩舎レポの想定を厩舎取材班に確認。この週から阪神、福島、函館の3場開催となるのだが、行われる重賞は阪神のマーメイドSだけ。しかも、このレースは牝馬限定のハンデ戦。出走馬の数がそう多くないことに加えて集客力のありそうなビッグネームもいない。このメンバーで2、3ページを割いて厩舎レポをする価値があるかどうか。カメラマンはすでに有力馬の写真撮影を済ませ、取材班も何頭かのコメントを聞いているのは間違いない。それだけに最終決断するまでには逡巡を繰り返したが、それぞれのスタッフに状況説明をして厩舎レポを中止した。型に嵌った企画を消化するだけではあまりに読者に失礼と判断してのことだが、ただ中止するだけでは単なる手抜きと解釈されても仕方ない。そこでいろいろ考えてはみたのだが、厩舎レポに代わる新企画が思いつかずに頭を抱えた。
ウオッカの宝塚記念挑戦のプランはダービーの翌週に耳にしていた。実現するとしても中3週での出走となるため、まずは体調面に問題がなければというのが前提。それだけに陣営から発表があるまで小社(ホームページ、携帯サイトも含め)ではこの件を一切取り上げなかった。未定の段階で記事にして関係者に迷惑をかけてはいけないとの配慮があったのはいうまでもない。金曜日(8日)になって一部の新聞に“ウオッカが宝塚記念参戦!”の見出しが躍り、陣営から「出走の方向で調整」との裏が取れた。暮れの有馬記念同様にファン投票で出走馬が選出される方式の宝塚記念だが、例年、上位選出馬の辞退が相次いでいるのはご存知の通り。“ドリームレース”とはほど遠いメンバー構成となっているのが現実だが、今年はファン投票上位6頭がこぞって出走の意を表明。過去にない豪華メンバーが仁川に集結することになった。この盛り上がりを見逃す手はない。
通常は1ページだけの週報『G1・2週前レポ』を“空前の豪華メンバーが仁川に集結”とサブタイトルをつけて2ページに拡大。予定馬のなかから13頭をピックアップして、近況とレースに向けての抱負を紹介。その記事をマーメイドSの厩舎レポに代わる特集とした。全体で4000字ほどになる原稿の処理には延々と時間を要したが、各陣営のコメントに目を通すだけでレースが楽しみになってきた。こんな気持ちになるのは実に久しぶりである。「ダービーかオークスか悩みましたが、自分がワクワクする方を選びました」―すっかりお馴染みになった角居調教師のコメントだが、最近の競馬からはこの“ワクワク感”があまり伝わってこないのが寂しい。
2日がかりでこの『2週前レポ』の処理を終えてちょっぴり気が緩みかけた土曜日の午後、取材班から一本の電話が入った。その内容は「新馬紹介で取り上げた馬が体調を崩して今朝放牧に出ました」というもの。JRAでは次週から2歳馬がデビューすることでもあり、11日発行号の週報では阪神、福島、函館でデビューする予定の新馬をカラー2ページで紹介する特集を組んでいる。その新馬のなかの1頭が放牧に出てしまったというのだ。「厩舎関係者は“代わりの馬がいなければ、仕方ないからそのまま載せてもいいぞ”と言ってくれていますが、そういう訳にもいきませんよね」と件の取材班は続ける。そこからは画像制作局と連絡を取って残っている2歳馬の写真を確認。そのなかで紹介できる馬を見つけてなんとか差し替えが終了した。
放牧に出た馬をそのまま掲載しているようでは競馬雑誌としての良識が問われるのは当然のことだが、問題はそれだけでは済まない。「競馬ブックにこんな記事が載ってたけど、ホントですか」というスタンスで取材する他社の人間もいれば、週報の記事の一部に手を加えただけで無断転載する新聞社もある。競馬マスコミのレベルの問題だといえばそれまでなのだが、だからこそより正確にして正統な記事で誌面を埋めることが必要となってくる。読者の方に十分満足していただけるような記事はなかなかお届けできないが、これからも店頭で“ワクワク”しながら手に取ってもらえるような雑誌をつくっていきたいものである。
競馬ブック編集局員 村上和巳 ◆競馬道Onlineからのお知らせ◆ このコラムが本になりました。 「トレセン発 馬も泣くほど、イイ話」⇒東邦出版HP