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夏の全国高校野球大会で駒大苫小牧が優勝した。少年時代を北海道の天北原野で野球少年として過ごした私にとっては快哉を叫ぶ出来事だった。野球部の監督が九州人だったのは仕方ないとして、ベンチ入りした選手全員が道産子だったというのも嬉しかったことのひとつ。選手、関係者が乗った飛行機が伊丹から新千歳に凱旋する際「ただいま津軽海峡にさしかかります。全国高校野球大会の優勝旗が初めてこの海を渡る瞬間です」との機内アナウンスが流れ、他の搭乗者全員が拍手で選手たちの活躍を称えたという。航空会社もたまには気のきいたことをするものだ。
駒大苫小牧の優勝の原動力となったのは当然ながら選手たちの頑張りだが、高校野球は指導者がいてこそ。素質ある若者を監督が心身ともに極限まで鍛え抜いたからこそ結果が出せたのだろう。他にも室内練習場の整備、他府県への精力的な遠征といった様々な創意工夫が結実したのだろうが、詳細はマスコミでもいろいろ取り上げられているのでそちらに譲るとして、忘れてならないのは地球温暖化の影響ではないかと個人的に考えている。
昨年こそ冷夏だったが、日本の夏は確実に暑くなっている。数年前の北海道では牧場で生まれたばかりの当歳っ子が熱中症で次々と倒れた。ホテルも冷房完備でないと客が寄りつかない時代になった。必然的に冬という季節も変化した。私が生まれ育った天北原野では1メートル以上も雪が積もり厳寒期には氷点下30度を超えることも珍しくはなかった。ダイヤモンドダスト現象など見馴れた風景の一部だったのだ。それがいまや積雪量は半減、氷点下30度を超えることもまずなくなった。つまり、野球部の選手たちが雪かきをすれば極寒期以外はグランドの感触を味わえる。野球はその名前通り屋外でやってこそのスポーツ。この気象の変化は大きいと思う。
今年もケイバブック週報で秋を待つ有力馬の特集を組む時期になった。2週前の段階で栗東の取材班、調教班に尋ねてみても「まだ暑いせいか、G1馬で栗東に戻っているのはオークス馬ダイワエルシエーロだけ」との返答。例年だと有力馬が集結する函館競馬場も「近年になく暑いためかG1馬の姿は1頭も見当たらない」と現地滞在の高柳利雄。追い討ちをかけるように「この春はせっかく関東馬が桜花賞と皐月賞を勝ったのに、どちらも9月までは美浦に戻る予定なし。写真がないことにはページ数に限界が」と美浦編集の和田章郎。温暖化はこんなところにまで影響を及ぼしている。やむなくカメラマンには牧場まで出向いてもらい、山元トレセンに移動したダイワメジャー以外の有力馬の写真は撮れた。そして、例年通り無事に特集を組めたのだった。
5週間後には秋のG1シリーズ第一弾のスプリンターズSが行われる。人間たちでも猛暑にへばっていた今年の夏。競走馬たちは無事にこの暑さを乗り切れたのだろうか、体調を崩した馬はいないのだろうかと心配になってしまう。地球温暖化も功罪相半ばである。
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競馬ブック編集局員 村上和巳
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