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編集員通信
競馬ブック編集員が気になる事柄にコメント
新データで
的中率アップ






 

◆“新データで的中率アップ”

  「そこ歩いとるたまにしかトレセンにけえへん怪しげなオッサン、帽子で変装してとぼけとるみたいやけど、正体丸見えやで。俺に対する取材やったらあとにしてや。いま、忙しいから」

 振り向かずともその声、独特のタメ口から相手が高田潤だとすぐに判る。馬上から嬉しそうにこちらを見つつ、ゆっくりと馬場へとつながる地下道へ向かう。赤帽の頃から知っている威勢のいい騎手のひとり。口は悪いがなぜか憎めない。

 「アホなことばかりいってないで、追い切りしっかり乗ってこいよ。君の乗り方、頑張り方ひとつにオーナーや厩務員さんの夢がかかってるんだから。そういえばその鹿毛、土曜メインに使う○○○だろ。ファンも注目してるんだから、ミスるなよ」

 黙って見送れば済むのに、わざわざ言葉を返さずにはいられない私。このあたりが他人につけ込まれやすい所以なのだろうが、これも持って生まれた性分なのだから諦めるしかない。

 「珍しいじゃないですか。ちゃんと仕事してるんですか。僕、トレセンにこない競馬記者って信用してないんです。馬はマシンじゃなくて生き物。その匂いをかいだり息遣いを聞いたりしてこそ本質が判るもの。もっとトレセンに顔を出さないとダメですよ」
 これは白浜雄造騎手。デビューの頃は口数が少なくておとなしい少年だったのが、凛々しい若者に変貌を遂げている。JRAの職員と騎手控え室の前でコーヒーを飲んでいる最中に、横から会話に参加してきてしっかりと自己主張。逞しくなったと驚きつつ、私も歳をとるはずだと納得した。


 「週刊ケイバブックの新企画、『リーディングジョッキー東西トップ20』ってありますよね。あの欄の僕のデータなんですが、単勝平均配当1823円や回収率167.79%ってどういうことですか」

  これはトレセンからの帰り際に出会った真一郎こと秋山騎手の質問。女性に人気があって伸び盛りな若手のひとりだ。単勝平均配当というのはその騎手が勝ったときの平均配当のこと。回収率の数字はその騎手の単勝を100円買っていたら、167.79円の払い戻しがあるということ。つまり、今年に入って秋山騎手の単勝を買い続けたら、平均67.79円プラス(引用したデータは6月13日の開催が終了した時点でのもの)になっているということだと説明した。

 「この前、ある地方競馬の交流戦に乗りに行ったら、無茶苦茶に野次られたんです。それで僕ってファンにとってどんな騎手なんだろうって少し悩みました。でも、話を聞いてちょっと自信が出てきました。これからも『東西トップ20』に目を通して、自分の欠点を調べて矯正しますから、応援してくださいね」

 データはあくまでデータであって万能ではない。しかし、この週刊ケイバブックの新データ『リーディングジョッキートップ20』は、調整ルームあたりでもかなり話題になっているとのこと。“藤田の写真判定不敗伝説”(ハナ、アタマ差決着のレースでは8戦8勝)とか、“3連複の穴男岩崎”(単勝6番人気以下の馬で3着以内に入って3連複で万馬券を出すこと実に17回)といったふうに、各騎手の特徴や傾向がかなり正確なデータとして割り出されており、これをうまく活用すれば馬券的中率の大幅アップも夢ではない。長年苦しんだ困窮生活に別れを告げるのも、そう遠い日のことではなさそうだ


競馬ブック編集局員 村上和巳


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