函館競馬場の調教スタンドからは海が見える。競走馬たちが馬場入りする午前5時半を過ぎると眼の前に調教風景が広がり、そして、その背景にはイカ釣り舟の漁り火が揺れる。なんとも不思議な光景であり、同時に懐かしい風景でもある。調教が終盤ともなる午前8時を過ぎると、サラブレッドたちの蹄音に混じって「イガ〜、イガ〜」というイカ売りの声が耳に飛び込んでくる。
先日、函館入りしている知人から大好物のイカが届いた。たかがイカということなかれ。透明にして甘味のあるこの時期の函館のイカは日本一だ。大喜びで台所に立ち、包丁片手に格闘。すぐにイカ素麺が完成した。次はゴロと呼ばれる内臓部分の処理だ。どろっとした中身だけを取り出し、ダシと醤油、みりん、酒を適量に混ぜる。匂い消しに柚子胡椒も少し落とすといい。できあがったゴロの半分を小さめの容器に入れ、細かいイカの切り身を混ぜる。これを一晩寝かすと村上流イカの塩辛が完成する。残り半分は更にやわらかな味付けにして、スパゲティ用のソースに活用。蓮根、椎茸、ニンニクの芽を具にして、オリジナルのゴロスパゲティが完成。これがまた、いける。今年は冷夏でイカも例年よりはやや小ぶりだったが、味は最高! もちろん、酒も進んだ。
以前は札幌開催で開幕して、後半が函館開催だった夏の北海道シリーズ。当時の函館は暑さを避ける古馬の一流どころが集結。デビューする新馬たちもクラシックをめざす好素質馬が目白押しで、ハイレベルな競馬が楽しめた。開催が入れ替わってからはごく普通のローカル開催になった気がして寂しい。しかし、それはそれ。あのファンファーレを聞くと無性に函館が恋しくなる。
そんな函館開催もいよいよ最終週。日曜日には2歳ステークスが行われる。個人的に注目しているのは、馴染みの榊原洋一厩務員が担当しているフィーユドゥレーヴ。今週号の週刊ケイバブック・フォトパドックに本人と愛馬が紹介されているが、人馬ともに元気いっぱいの様子。勝ったらパネルとリンゴでも持って厩舎に顔を出す予定だが、最終的には彼らが栗東へ帰ってきたときの私の財布の中身次第。素寒貧になってプレゼントどころじゃなくなっている可能性大なので、まだ本人には連絡していない。
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