二十数人が机を並べている我が編集局。比較的暇な水曜午後などは、あれこれ雑談に花が咲く。先日も「……したら、それがバカ受けで」と私が話したところ、対面の西村(数少ない20代局員)が「“バカ受け”は死語。他にも、“ナウい”とか“ヤング”もそうですよ」と笑みを浮かべつつ突っ込む。
それを耳にしたO氏(KTV解説者)が、「じゃあ、ナウいヤングにバカ受けって、いまの若い人はどう言うんだ?」と会話に参加。平均年齢の高い編集局内は、ジェネレーションギャップに騒然となったのである。
そういえば、先日の夜、偶然にテレビをつけたところ、「キスがキッスならステーキがビフテキ、カップルがアベックなの、もう嫌。中年オジサンの言葉って、信じられない」という若い女性の声が飛び込んできた。ビフテキという言葉を使ったことはないが、キスはキッスでもいいと思っていたし、アベックは違和感なく使い続けてきた私。ここでもまた、考え込んでしまった。
少なくとも、出版業界に身を置く限り、流行や時代感覚には敏感でなければならないと考えている。だからといって、以前に国語審議会で問題になった「ら抜き言葉(出れる、食べれる、着れる等)」のような奇妙な若者文化を容認する気はない。立場上、しっかりした見識が必要だと考えつつも、時として流されている。
『オレハマッテルゼ』という3歳未出走馬がいる。厩舎取材担当の小原が「“俺嵌まってるぜ”という意味ですよね」と主張する。でも、オーナーの小田切有一さんの年齢とネーミングの傾向から類推すると、「俺は待ってるぜ」が正解だろう。私と同年齢かそれより上の世代なら知っているはずだが、昭和三十年代にヒットした映画(同名の主題歌もある)のタイトルなのだから。当時国民的ヒーローとして活躍していた俳優の主演だったが、その人物を好きになれなかった私は、彼の主演映画を一本も見た記憶がない。
“ウザイ”とか“キモイ”なんて言葉(音声)を耳にすると頭が痛くなるし、この歳になっても、流行や人気を嫌って穴馬券ばかり買っているのだから、人間の本質なんてそう変わるものではない。しかし、時代感覚ときちんとした見識とをバランス良く持ち合わせていれば、馬券の的中率がもっと上がるのではないか(笑)−なんて考えてみたりもする。
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