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編集員通信
競馬ブック編集員が気になる事柄にコメント
金曜日の憂鬱






 

◆金曜日の憂鬱

 ケイバブック当日版の一面上段には34ポイント(ぐらいだと思う)活字の見出しがある。基本的には東西別紙面なのだが、G1レースの一面に限っては統一紙面となり、この見出しも同一のものが使われている。現在、関西の土曜版は我が社の先輩I氏が、そして日曜版は私が担当している。

 【昔日母はハナ差で女王になった】―この見出しは平成8年のオークス当日のもの。母とは昭和58年のオークス馬ダイナカール。その娘エアグルーヴは、作者の期待どおりに堂々とオークスを制し、見事に母娘制覇を達成した。

 【移り気な秋も愛でる名花】―これは同じ年の秋華賞の見出しで、大本命エアグルーヴを取り上げたもの。秀逸と評判になった後輩記者の作品だが、肝心のエアグルーヴがレース中に骨折して大敗。残念な結果となってしまった。

 見出し作成には、豊富な語彙と知的センスが要求されるだけでなく、時代感覚にも秀でていなければならない。そのすべてに無縁な私は、この仕事の担当になって1年以上が経過したというのに、毎週、毎週、締め切りの金曜3時になると胃が痛くなり、出稿を終えると自己嫌悪に陥る。基本的には牡馬のレースはダイナミックでパワフルに、牝馬のレースは繊細にして優雅にとイメージしているのだが、肝心の言葉が出てこないから厄介であり、悲しい。

 【寒風に向かって凛と立つ】―どんなレースで使われたものかは忘れたが、これはその昔、ある先輩記者が冬場の裏開催時に作成したもの。当日版を広げた瞬間に“凄い!”と痺れた記憶がある。

 【最強という名の名誉を賭けて】―これは平成8年春の天皇賞。前哨戦の阪神大賞典で死闘を演じたナリタブライアンとマヤノトップガンが再度対決したときのもの。結果は第三の馬といわれていたサクラローレルが快勝。最強馬の称号を自らのものとした。

 この原稿を書いているのは土曜日の夜。もちろん、まだ桜花賞のレース結果は判らない。個人的にはヤマカツリリーかスティルインラブに勝たせたいと思いながら、【祖母から母へ、そして7年の時を駆けて】―なんてアドマイヤグルーヴがオークスに出走するときの見出しを考えてしまう私である。金曜日の憂鬱はこれからも続きそうだ。


競馬ブック編集局員 村上和巳


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