従来の選考基準を少し手直しして迎えた第16回ワールドスーパージョッキーズシリーズ。例年なら当然選ばれているはずの関西第3位福永が選に漏れ、代わって新ルールで推せんを受けたのが河内だった。当人は周知の通り平成15年度の新規調教師免許試験を受けており、1000勝突破の実績からそちらの方の合格はほぼ間違いないものと考えられているだけに、栄誉あるこのシリーズへの出場はラストチャンス。ある意味においてはひとつの花道となり得た。
初日ゴールデンサドルTはメイショウタローで9着。ゴールデンホイップTもアサカディフィートで11着に終わり得点争いでは下位に低迷している状態にあった。2日目は多少希望の持てる手駒であったものの正直なところ、これでは……というのが逆転優勝へ向けての一般的な見方であった。ところが、まさかをパーフェクトにやってのけた。
10RゴールデンスパーTは武豊を必要以上に意識した人気馬が深追いしてハイペースを作り出し自滅。河内は対照的に終始後方で黙りを決め込み直線勝負に出たペース判断の確かさが勝因。ゴールデンブーツTも追い込みだったが、このレースは前が団子状になりゴッタ返していたため、力を出し切れずに終わった馬が多々いた。進路選定がポイントになっている。2着に入ったタニノエタニティが最外を通って追い上げるのを見るや、その後ろにタイミングを合わせ要領良く食いついて行かせている。仕掛けの時機、通らせたコース、刻一刻と様相を変える流れへ滑らかに対応するよう仕向けて行く。まだ勇退するには勿体ない技術をここぞとばかり駆使しての2連勝でアッと驚く大ドンデン返しを演じての優勝だった。
あたかも仕組まれた味のある戯曲のような一部始終であったが、主役の河内が現役でいられる時間に限りがあるという背景があるだけに余計今回のWSJSは感動的で永く記憶に残るシリーズとなりそう。
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