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常に工夫した厩舎管理が生む名馬

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◆常に工夫した厩舎管理が生む名馬

 G1を10勝もする調教師はそういない。数えるほどの中の1人伊藤雄師は、常に新しい物事を考え出す気持ちを持った人。今でこそなくなったが、30年ほど前は馬集めが大変な時代で、損をさせないように努めることで馬主の信頼を得、大金を投資してもらって良血を集め今日の礎を築いた。出馬投票の窓口に待機し、メンバーの弱いところをとことん選んで締め切り間際まで検討していた。そこまでやる人は1〜2人いたかどうか。

 師は現在3台の車を所有している。栗東トレセン内で専ら使用しているのはフォルクスワーゲンの小型車。通常の運動は厩舎周囲のコースを左回りで周回する。その外側に車道が設けられてある。馬の観察は、目線が横腹の高さにくるのがベストで、ちょうどその点に目が行く高さの座席になっているのと、運動に並行、伴走する形が取れるのに最適の左ハンドル、小回りが利くことが車種選定の条件となっていた。ピッタリ調教師について回られては手抜きなどできない。が、そこまでキッチリ密着しなくとも普通手を抜いたりしない。稼ぎのいい厩舎は、厩務員個々の技術水準が高いし、一様に勤勉である。だから、仕事ぶりを監視しているのではなく、伴走しながら人と人との意思の疎通を図るというのが主目的なわけ。蹄に付着した土の量や色によって、運動を手抜きしていたかどうかは分かるから、ごまかしは利かない。

 厩舎周辺には様々な形の蹄跡ができている。自厩舎の馬に限られるが、そのひとつひとつを見て、即座に師の口から馬名が飛び出してくるのはプロといいながらも驚異的である。蹄跡は健康のバロメーターともなっている。どこか具合の悪いところ(例えば肩とか、膝とか)があれば必然的にそこをかばうため、バランスの片寄った歩行となるから蹄跡も変形したものになってくる。それを漏れなくチェックするのも伴走の重要な役割。


編集局長 坂本日出男


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