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手かせ、足かせさえなければ……

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◆手かせ、足かせさえなければ……

 返り初日のメインレースTVQ杯で、飯田がアッと驚かせるレースをした。フェルメールブルーがハナに立ち、他が競り掛けてこないのを見越してペースダウンを図った。作戦としては間違いではなくとも、いかにもペースを落とし過ぎた感じ。ものには限度というものがある。度が過ぎると14頭もいる敵の中には必ず反発する者が1人や2人現れてもおかしくない。ほとんどが四苦八苦しながらも折り合いをつけて流れに乗ろうと努めている時、唯一飯田のみがそれを受け入れず、咎めるように向正面より出て行った。

 2角シンガリで3角先頭。見た目には無謀の謗りを免れない行動に映ったであろう。自分でも“ちょっとやり過ぎだった”かと反省してもいた。同時に“最後まで保ちそうな手応え”だったのも確か。あの地点を数字的に見れば、飯田は決して無理な脚を使わせてはいなかった。あのような思い切りのいいレース運びをするケースはもっと数多くお目にかかれても良さそうなものだが、調教師からの作戦指令を受けてないことの方が珍しい昨今では、良かれと思ったとしてもなかなか自分勝手な行動は取れない。

 だから、あの場面での飯田以外は金縛りにあったようにゴチャゴチャしながらも自ら流れを変えようとはしなかったのだ。仮に、あの場へ武豊がいたらどうしただろう。おそらく何等かの動作を示していたろう。彼はすべてではないにしても、まず制約を受けないで行動を起こせる数少ない存在だから。たとえ失敗しても、そのことで他の騎手に乗り替えられる心配はない。絶えず馘首される不安に怯え続けている身では、保証のない危ない橋は渡れない。できるなら避けて通りたいはずだ。初めから縛りつけないで、自由気儘に乗せてやれば、もっともっと上手に乗れる若手は沢山いるのだが……。


編集局長 坂本日出男


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