軽やかに力強く
春の中山、阪神開催が終わって牡、牝のクラシック第一弾が終了。皐月賞はオルフェーヴル産駒のエポカドーロが勝ち、桜花賞はロードカナロア産駒のアーモンドアイが勝って奇しくも昨年デビューの新種牡馬の揃い踏みとなった。両馬は同じ2008年生まれ。ほぼ同時期に活躍していたが、クラシック3冠を制したオルフェーヴルに対して短距離路線で活躍したロードカナロアだけあって現役時代に直接、対戦することはなかった。ただ、2年連続で凱旋門賞2着のオルフェーヴルに香港スプリント2連覇を達成したロードカナロアの実績もヒケを取るものではなかったし、今度は父として同じ土俵の上で鎬を削っていくことになると思う。現時点での3歳世代のリーディングサイアーはディープインパクトだから世代交代と言うのには早いが、新しい風が吹き始めているのは確かだろう。 波乱の皐月賞は私の予想もかすりもしなかったので悔しくもなかったが、桜花賞に関しては反省するところが多い。結果的に1番人気で2着だったラッキーライラックを評価していたので見当違いではなかったが、詳しく聞いているはずのアーモンドアイを過小評価してしまったのだ。トライアルを使わずに直行のローテーションは予定通りだし、美浦に帰厩後の調整も2週連続、霧の中で見ることができなかったが、順調に追われて動きも文句なし。取材の感触だけで言えば◎なのに速い持ち時計がないと言う一点だけで疑ってしまったのだ。だが、終わってみれば高速決着になって更に強さが強調されたと言っていいくらい。課題のスタートも無理に出す必要がないという追走ぶりで位置取りは悪くても直線で外に出した時の手応えが一頭だけ違っていた。仕掛けられるとアッと言う間に先行集団に取りつき、抜け出してからも余裕があって完勝だった。 だが、それ以上にインパクトがあったのが直線でのフットワーク。まるでスキップを披露しているのかのように何回も手前を替えながら、それでいて軸がブレることなくまっすぐに坂を駆け上がってきたのだ。手前変換といえば通常はコーナーリングだったり、直線での疲労を軽減させるためにするものだが、同馬はまったく違っていた。苦しがっている場面はなかったし、同じメンバーであれば距離云々も愚問だろう。直線で手前を何回も替える馬で思い出すのが、女傑ブエナビスタ。偉大な先輩と比較するのはまだ早計に過ぎるが、桜花賞でのレースぶりは彷彿とさせるものだった。同厩舎の先輩ではGT5勝のアパパネもいたが、パワフルで牝馬離れした先輩とは違ってこちらはしなやかで軽い走り。いい意味での牝馬らしさがある。まだ自身のキャリアは始まったばかりで次走も現時点は未定。だが、今度は判断を誤らぬようにしっかり取材してもっと大きな夢の続きをしっかり見届けたい。
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