468回の着外
12月も中旬を迎えて残りも僅か、時が経つのは早いが、世間一般でも今年を振り返るという時期になっている。先週の阪神JFでは関東の石橋脩騎手が久々のGT勝ちを決めて一矢を報いたが、この秋の大レースでは既に日本での免許を得ているルメール、M.デムーロ騎手を含めて外国籍の騎手の活躍が目立った。特にナショナリストという訳ではないが、大相撲の例を見るまでもなくせめて日本で行われるスポーツぐらいは日本人が活躍してほしいのは人情か。 まだ日数があるので確定ではないが、今年のJRAリーディングジョッキーはルメール騎手で決まりだろう。現在3位のデムーロ騎手もそうだが、日本の競馬を理解して関係者や一般ファンにも親しまれているのだからこの活躍に違和感はないが、勝ち鞍で叶わないなら違う面で何か勝っているものはないかと探すと騎乗数では和田竜騎手の973鞍がトップだった。いわゆる中央場所と呼ばれる東京、中山、京都、阪神の4場所と夏の10週を含め、重複分を除くと実質的に騎乗可能なのは1年で106日。障害レースもあるが、一日12レースと計算すると1272鞍が一人の騎手で騎乗可能なマックスか。そう考えると今年も966鞍に騎乗し、2012年には1081鞍という記録を打ち立てた鉄人、幸騎手の凄さが分かる。 主に馬券という方向からアプローチするファンの立場からすると意味があるのは3着までになるが、騎手成績でいうと5着までは普通に順位としてカウントされるし、馬主さんの立場からすると8着までは賞金の対象になる。更にいえば厩舎関係者にとってみれば1回切りの着順よりもレース内容の方が大事ということもある。今年でいえば6着以下の着外数の上位は先に挙げた和田竜、幸両騎手以外に内田博騎手が500を超えている。そのあとは松山、柴田大騎手が続く。実はここまでの5名は今年だけ着外数が多いのではなくここ5年くらい、ほぼ例外なく上位にランクしている。怪我なく健康で騎乗停止が少ない、それに信頼されるような人柄とかいろいろ要素があるのだろうが、そこには一定の傾向が見られる。そして上位5人の後に続くのが今年は新顔と言っていいデビュー3年目の野中騎手の着外数468鞍だ。勝ち星のリーディングでは残念ながら69位に留まっているが、フランス遠征も含めて多くの人達にその存在をアピールした。今年はGT勝ちこそないものの、大舞台での活躍がありデビュー22年目で過去最多勝を記録している和田竜騎手。皐月賞で念願の中央GT初勝利を決めた松山騎手は平成生まれの騎手では一番乗りだった。着外数の多さは騎乗数の多さに直結して大きなチャンスを得ている証拠だ。現時点でどの馬で活躍するのか?来年はすぐにリーディング上位か?というほど単純なものでもないだろうが、飛躍への条件は整っていると言っていいだろう。今年を振り返りつつ来年の野中騎手の活躍を期待したい。
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