働くゴールデン ウイーク
ひと足早い夏の到来を思わせる陽気だった今年のゴールデンウイーク期間中。水曜に追い切りがあって土日に開催が行われるこの世界では例年のことながらそんなことは無縁。いつも通りの通常運転で僅かに火曜や金曜の移動中の高速道路の混み具合が気になる程度。それでも絶好の行楽日和は体感できたし、競馬場内で立ち寄ったコンビニは土曜の早朝とは思えないくらいの行列が。1Rの開始前という時間からどの顔も希望に満ち溢れていた。多くはないが、弊紙を片手に買い物を続ける人達の姿も。責任を感じてしまう……。その日のメインレースはダービーの最終切符をかけたプリンシパルS。ダイワキャグニーが一番人気に応えて快勝。勝ち時計は3歳春の時点では驚異的と言っていい1分58秒台。1月のセントポーリア賞の内容からこれくらいの潜在能力はあると見ていたが、惜しくむらくはローテーション。本番まで中2週という間隔でどこまで疲労回復ができるか、それに尽きると思う。 翌日も朝から快晴の空模様。春の東京開催の5週連続G1の嚆矢となるNHKマイルC。終わってみれば3歳世代の牝馬優勢の前評判通りのワンツーフィニッシュ。とは言っても2着のリエノテソーロは13番人気の評価で私の眼中にもなかったのだが……。結果的には土日共に勝ったのは菊沢厩舎の所属馬。このあたりは偶々の巡り合わせとは言え関係者にとっては二重の喜びになっただろう。ただ、それよりもひと際、嬉しい気持ちを表していたのはアエロリットの鞍上だった横山典騎手。デビューから6戦、一貫してこの馬に乗り続け、新馬勝ち以来の勝利をこの大舞台で飾ったのだから当然だが、それだけではないだろう。ご存知の方も多いだろうが、横山典騎手と菊沢調教師は義兄弟の関係にある。勝負の世界に私情は禁物かもしれないが、同じ目的のために続けてきた努力が報われたのだから一層、感じるものがあったに違いない。 今年デビューした三男武史騎手と長男和生騎手は同じ日、新潟で騎乗していたが、父の勇姿を誇らしげに見ていただろう。いつもは感情を抑え気味にしている典弘騎手はウイニングランの後にステッキをスタンドのファンにプレゼントした。最終レース終了後に出会った表情にはひと仕事を終えた満足感が窺えた。私も含めてこの業界のひと達はゴールデンウイークだからと言ってカレンダー通りには休めない。ただ、それでも多くのファンに夢や感動を与えて家族や友人に活躍ぶりを見せられるならそれだけで十分な役割を果たしていると思う。休む人と働く人が一体になって時を過したゴールデンウイークが終わった。
美浦編集局 田村明宏
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