高齢牝馬の 活躍に思う
年の瀬を迎えました。振り返ればこの2016年も様々な出来事が起こり、様々な記録が生まれた一年でした。たとえば、皐月賞とダービーの上位5頭がまったく同じ顔ぶれだったのは今年が初めてのこと。遡れば、春の2冠の競走体系が確立したのが1939年(昭和14年)。80年近い歴史の中で、初めて≠ニ聞いて、少々意外に思えた出来事でした。
さて、この件はまた後日取り上げるとして、今回はもうひとつ印象に残った記録を。これも春シーズンの話ですが、ストレイトガールがヴィクトリアマイルに優勝、同レース2連覇を達成するとともに史上初の7歳牝馬によるG1制覇を飾ったことです。 そのヴィクトリアマイルの創設が2006年。また、古馬牝馬によるもうひとつのG1・エリザベス女王杯も事実上の創設が1996年と比較的後発のG1。このように、古馬牝馬のG1出走機会が段階を踏んで増えてきた背景を思えば、今回の7歳牝馬による初のG1制覇も生まれるべくして生まれた記録≠ニ言えるかもしれません。 とはいえ、7歳牝馬(旧齢8歳)による重賞制覇は、1983年に中日新聞杯に優勝したフジマドンナが史上初めて。つまり、それまでの7歳牝馬は現在のG3レベルの重賞にすら優勝例がなかったことになります。それを思えば、ストレイトガールのG1制覇は、やはり賞賛に値する記録と言えるでしょう。
ここで、フジマドンナ以降の高齢牝馬の主な活躍を見てみると……。
●フジマドンナの快挙から2年後の1985年、シャダイコスモスが中山牝馬Sに優勝して7歳牝馬として2頭目の重賞制覇を記録。 ●2001年に7歳牝馬ブロードアピールがプロキオンS、シリウスSと重賞に年間2勝を挙げるとともに、交流重賞のかきつばた記念にも優勝。更に、交流G1のJBCスプリントでも2着に健闘。 ●翌2002年にはそのブロードアピールがガーネットSに優勝して、8歳牝馬としては史上初となる重賞制覇の快挙。 ●2007年に福島牝馬Sのスプリングドリュー、中山牝馬Sのマイネサマンサと、7歳牝馬の重賞ウイナーが年間に2頭誕生。 ●2008年に7歳牝馬ジョリーダンスがG1(Jpn1含む)に4度出走(ヴィクトリアマイル、安田記念、スプリンターズS、マイルCS)、および、3度の重賞入着を記録。 ●翌2009年にはそのジョリーダンスが阪神牝馬Sに勝って8歳牝馬として史上2頭目の重賞制覇を飾るとともに、G1のヴィクトリアマイルで5着に入着。 ●同じ2009年には9歳牝馬のメイショウバトラーが交流重賞のマリーンCに優勝。 ●翌2010年にそのメイショウバトラーが、実に10歳にして交流Jpn1の南部杯で4着に入着。 ●そして今年、ストレイトガールが7歳牝馬として初のG1制覇を達成。
駆け足で振り返ってみましたが、ざっとこんなところでしょうか。ストレイトガールの今年の快挙も立派なものですが、2010年、10歳牝馬として交流Jpn1に入着を果たしたメイショウバトラーにも頭の下がる思いです。 ちなみに、10歳まで走ったそのメイショウバトラーですが、繁殖入りして現在までに2頭の現役競走馬を送り出しています。そのうちの1頭が、これまで2勝を挙げている栗東・高橋義忠厩舎の4歳牝馬メイショウタラチネ。おそらくこの馬名、11歳にして繁殖入りした母メイショウバトラーを意識してつけられたものなのでしょう。
さて、この次に誕生する記録は果たして9歳牝馬のJRA重賞制覇か、それとも、8歳牝馬によるG1制覇か……。それらが達成される日も、そう遠くないかもしれません。
美浦編集局 宇土秀顕
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