目指せ エンパイアステート
秋の東京開幕が3日競馬。それが終わって振り返って見ると、スプリンターズSも凱旋門賞もそうだが、4回中山競馬は遠い昔の話のように思われてしまうが、僅か2週前まで行われていた。中でもこの開催には例年、特殊なレースが開催される。関係者の間では“スーパー未勝利”と呼ばれている特有の資格を持った3歳未勝利馬が出走できるレースだ。その条件は皆さんもご存知だろうが、出走履歴が5戦以内か、前走で5着以内を確保した馬達で同じ開催で出走できるのは一度切り。3歳未勝利戦がここで終わってしまう状況を考えると実質的には(それ以降も出走可能枠があれば勝っている馬を相手に戦うことも可能)未勝利馬には最後のチャンスと言っていい。多くのファンの注目を集める華やかなG1レースとは性格が異なるが、まさにサバイバルレース。視点を替えるとこれほど面白いものはないかもしれない。 ダービーからダービーへ。近年はダービーの翌週から2歳新馬戦がスタート。先週も京都競馬ではミッキーアイルの半弟やサトノダイヤモンドの半妹がデビューを勝利で飾って注目を集めているが、いずれのレースもスローの上がり勝負。2着には逃げ馬が残っていた。長い将来を考えれば今後に向けて折り合い重視になるのは当然でそんな中で抜群に速い上がりの脚を使えるのは素質の証。だが、無責任かもしれないが、レース観戦している側に立てば盛り上がりに欠けてしまうのも確か。その点、スーパー未勝利はいい。これが最後と思えばケレン味のないレースができる。いつもより少し速いかなと思われる3角あたりから仕掛けて行って負ければ仕方なし。思い残すことはないのだ。9月10日の中山ダート1800m戦に出走したエンパイアステートもその中の一頭。向正面までは3番手を進んだが、外から早目に動いて来る馬がいて、それに合わせる形で動き4角先頭。坂を上がっても頑張っていたが、ゴール前で力尽きてしまって3着に。見ている方もそうだが、出走させた関係者も納得のレースだっただろう。 通常であればもう自身に適したレースはないので中央競馬では御役御免となって引退となるか地方競馬に転出して新たな可能性を探っていくのだが、足元の不安があってデビューが3歳7月の新潟競馬と遅く、まだ3戦しか消化してない同馬は500万条件戦(格上ではないが、勝っている馬が相手)にチャンスを求めてそのまま在籍することに。血統背景や馬体からも芝の大レースに挑戦というようなことはないだろうが、デビュー戦で経験馬相手に果敢に途中からマクッて先頭に立った機動力や2戦目では2番手につけた先行力を考えると大型馬でまだ良化の余地も残しているだけに悪くない選択肢だろう。何より潔い走りをしてくれた点に好感が持てる。帝国の首都、一般的にはニューヨーク州のことを示す馬名を戴いた同馬。ゴールまではかなりの道のりがありそうだが、どこまで近づけるかその歩みを応援したい。 美浦編集局 田村明宏
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