旅先の アフター競馬
北は北海道、南は九州と全国にスタッフが散らばる夏競馬。私自身は普段、競馬開催日は現場と栗東居残りの両方で土曜日は主に内勤だが、1泊2日で臨む中京、小倉に関しては途中参加が難しいため、担当の週末は現場専門のTMと同じスケジュールで競馬場の仕事に入ることになる。中京へは数人が乗り合わせて車で向かい、小倉へは各々のスケジュールで新幹線で移動。いかにも夏休みという家族連れに紛れてスーツケースを転がしていると、京都に到着する頃にはすっかり旅気分になり、まるで自分もバカンスのように思えてくる。
旅先での競馬は非日常の高揚があり、何年も通っていると現地で顔馴染みもできて、その土地土地でのアフター競馬のひとときが夏のイベントのひとつとなるが、最近は図太くなったもので、ひとり飲み歩き・店の探索に喜びを覚えるようになってきた。「吉田類の酒場放浪記」という番組をご存じだろうか。酒場ライターの吉田類氏が大衆酒場を探索するタイトルそのままの番組だが、ご常連との和気藹々とした掛け合いが微笑ましいこの番組と、「旅先でも、地元の人が通う店を見つけるといい」という酒を愛する我が父親のアドバイスが「おやじギャル世代」の私の中にスルりと収まり、自分なりの店選びの基準が定まってきた。競馬新聞とビールは週末のセットアイテムだと思っているし、馬券に勝てばあぶく銭で、負ければ負けついでにと飲みたくなるのが常。心地良く過ごして、明日への活力にと出張先ではついつい財布の紐が緩む。
好んでいくのは、表通りではない、小路のこぢんまりした店構え。ひとりでも入りやすいのが大前提で、スタイリッシュな雰囲気ではなく、年季が入っていた方が居心地がいい。お品書きは壁に紙が貼ってあったり、黒板やホワイトボードだったりで手書きが味があり、カウンターにおばんざいが大皿で並んでいると心底ほっとする。場所は宿泊先から近いほどいい。居を構える栗東でもそうだが、近場で生活圏が同じであれば、初めてでも無意識に連帯感、安心感が芽生えてくるからだ。今年の小倉ではホテルから程近い場所でおでんと焼き鳥屋、天ぷら屋の2軒がヒットして大満足だった。今後のためにもうちょっと探してみようとほろ酔い気分で街をぶらぶらしていたら、ビルの谷間から着物姿で出てきた小料理屋のママに迷い人と勘違いされて声をかけられ、「手頃な値段でひとりで入れるお店を探しているんです」と状況を説明すると、地元で重宝されているという店を2軒教えてくれた。プロが誉める店ならば、間違いなく当たりだろう。このあと小倉出張がなく、出向くことができないが、来シーズンには顔を出して、できればママも見つけて、お礼のひとつでも言いたい。
さて、栗東に居残っていても旅気分、夏休み気分が抜けない私の店探索は終わらず、下戸で居酒屋が苦手な旦那様を半ば無理やり連れ出してお目当ての店に行ったが、帰りの道すがら、「(今日食べたもので)何が一番おいしかった?」と尋ねてみたところ、「辛口ジンジャーエール」との返答。それってどうなのと思いつつ、まあでも確かに美味だったので、クックパッドで調べてみると、ジンジャーエールは家で作れることが分かった。材料は生姜、砂糖、はちみつ、シナモン、鷹の爪、レモン汁、炭酸水とすぐに調達できるものばかり。市販のものよりサッパリとしていて、後味がいい。今回は酒飲みのコラムになってしまい、飲まない方には退屈ではなかったかと懸念されるので、締めは辛口ジンジャーエールで。簡単に作れるので、厳しい夏の暑さ対策にどうですか。
栗東編集局 山田理子
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