『夢膨らむ』
12月13日阪神競馬場で行われた阪神ジュベナイルフィリーズをメジャーエンブレムが制覇。開業以来18年、懇意にさせて頂いている田村厩舎(血縁はありません)に初めてのGT勝ちをもたらした。コンスタントに勝ち星を積み上げて関東リーディングでは常に上位を窺って今年は過去最多タイに並ぶ31勝(中央開催のみで12月20日現在)を挙げているが、ここまでソーマジックの桜花賞3着など惜しいレースはあったものの、ビッグタイトルは今回が初めてだった。
同馬の母、キャッチータイトルも田村厩舎に所属してオープンクラスまで出世し、芝の中距離路線では牡馬に混じって戦い、互角のレースをしていたのは記憶に新しい。産駒もすべて同厩舎でデビュー。4番仔にあたるのがメジャーエンブレムだった。厩舎ゆかりの血統ということもあって期待の大きさは何度も聞かせて貰っていたが、3戦目のアルテミスSで初めて負けた時は私の評価も少し揺らいだのは確か。ただ、前走にしても阪神への長距離輸送でまったく体重が減らず494キロの馬体。デビュー2戦までは牡馬混合のレースを使っていたこともあって牝馬であることを忘れるくらいの器だけに1番人気に応えての勝利は当然と言える結果だった。
常に短期放牧を挟んでの調整が続くだけに担当者が替わることが多い、同厩舎でもこの馬だけは別で田中調教助手が他の馬を手放してでも帰厩すると世話を続けている。「前走のことがあっただけにまずは枠順が良かったですね。途中で前にいた馬が下がってしまって早目に先頭に立ちましたが、最後まで余裕がありましたからね。坂を上がって突き放したのだから大したものですよ。それにパドックを周回して感じたことですが、他の有力馬は皆、小さく見えましたからね。これは負けられないなと思いました。レース後はお祝いの電話やメールが凄かったけど、もう余韻には浸っていられません。これからが大事ですからね」と気を引き締めていた。
後方からの差し切りが多いジュベナイルFだが、先行して押し切り後続に2馬身差。完勝と言えるものだったし、今回の走りなら課題の折り合いも気にならなかった。気性面を考慮して年明けは東京のクイーンCを叩いて桜花賞に挑む予定だが、現時点で同世代の中で一歩リードは確か。今後は厩舎初のクラシック制覇に向けて夢は大きく膨らむ。
美浦編集局 田村明宏
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