『絶対王者不在の秋』
牡馬クラシック最終戦の菊花賞、その本番がいよいよ今週の日曜に迫りました。ご存知の通り、今年は2冠馬不在の菊花賞。その2冠馬ドゥラメンテは、ダービーの直後から秋の進路が話題に上がっていましたが、夏の放牧中に骨折が判明。結局、秋の予定はすべてが白紙となってしまいました。もし無事だったら3冠に挑んでいたのか、それとも、現在のクラシック競走体系に一石を投じる道を選んだのでしょうか……。
それはさておき、春シーズンに2冠馬が誕生しながら、その2冠馬が菊花賞に姿を見せなかったケースというのは過去にどれくらいあるのか? 振り返ってみたところ、今年を含めて全部で8例ありました。これまでに誕生した春の2冠馬(3冠馬を含む)は計23頭ですから、3頭に1頭は菊花賞の舞台を踏むことなく、3冠の夢を散らしたことになります。ちなみに、その顔ぶれは以下の通り。
このうち、ダービーが現役最終戦となったのは、トキノミノル、カツトップエース、サニーブライアンの3頭。ダービーが最後の勝利となったのは、クリノハナ(ダービー以降5戦0勝)、ヒカルイマイ(同2戦0勝)の2頭。また、カブラヤオーはダービー以降4戦3勝の成績を残しましたが、重賞には未勝利。残る1頭、トウカイテイオーだけが2度にわたる長い闘病生活を乗り越えて、ジャパンC、有馬記念と再び大舞台で頂点に立ちました。これは皆さんがよくご存知の通り。現在、雌伏の時を過ごしているドゥラメンテも、不屈の闘志で復活を遂げたそのトウカイテイオーに続いてほしいものです。
ところで2冠馬の出走が叶わなかった過去7回の菊花賞は、果たしてどのような結果に終わっているのでしょうか? 2冠馬という絶対的王者が抜けた後は、ナンバー2、あるいは、ナンバー3といった存在が順当に王座にスライドしてきたのか、はたまた、新たなヒーローが風雲に乗って栄冠を射止めたのか。今度はその7回の菊花賞馬を見てみると……。
結果はもう瞭然。皐月賞やダービーで上位を賑わした馬が優勝した例は1991年のレオダーバン1頭のみで、この年を除くと、いずれも絶対王者不在という状況の下、春の勢力図が描きかえられてきたことが分かります。 ちなみに、どの年も2冠馬こそ不出走でしたが、その2冠馬と覇を競った春の実績馬の出走はありました。例を挙げると、マチカネフクキタルが勝った1997年の1番人気はシルクジャスティス(ダービー(2)着)、2番人気はメジロブライト(ダービー(3)着)。レオダーバンが勝った1991年の1番人気はイブキマイカグラ(皐月賞(4)着)、ミナガワマンナが勝った1981年の1番人気はサンエイソロン(ダービー(2)着)、そして、コクサイプリンスが勝った1975年は1番人気がイシノアラシ(ダービー(5)着)、2番人気がロングホーク(皐月賞(2)着)、3番人気がハーバーヤング(ダービー(3)着)。 少なくともいま例に挙げた馬たちは、これら春の既成勢力を堂々と打ち負かしての勝利だった訳です。
さて、今年で8度目となる絶対王者不在の秋≠ヘ、はたして過去の傾向が踏襲されるのでしょうか。それとも、春の実績馬がデータを覆して底力を見せるのでしょうか……。 ちなみに、前出7頭の菊花賞優勝馬の共通点をもう一度整理しておくと……。
(1)春のクラシックで入着実績があったのはレオダーバンだけ (2)ただし、クラシック不出走だったのはコクサイプリンスだけ (3)菊花賞本番で6番人気以下だったのはミナガワマンナだけ
人気に関してはレース当日まで分かりませんが、過去のデータ通りになるのなら、戴冠を果たすのはこれらの条件に叶う馬。今年のメンバーを見渡して、その可能性があるのはミュゼエイリアンあたりではないかと考えています。 さて、結果やいかに?
美浦編集局 宇土秀顕
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