『将来の夏競馬へ』
先週から二つの台風に挟まれるような格好になった日本列島。各地で大雨と強風の影響が出たようですが、急激に気温が下がって、今週明けにはもう「夏が終わったのか?」と思わせるような気候になりました。 「どうやら今年の夏も乗り切った」感に満ちているところですが、このネタは何度か使いましたので、今回は敢えて別の、まさに“ネタ”の話を。
この「週刊トレセン通信」を書くにあたって、さて何を書きましょうか、ということは常に悩まされること。書くことが決まった後は、案外、一気に進められるものですが、そこに至る前は結構、大変だったりします。
その対策として、落語家さんではありませんが、私も“ネタ帳”よろしく、これから取り上げてみたいかな、と思う話題をスケジュール帳の余白ページに箇条書きにして溜めてたりします。で、それぞれのトピックについて、自分なりに道筋というか方向性が見えてきた頃合を見計らって書くわけですが、この時に注意しているのが時節性。要するにタイミングです。
一昨年亡くなったコラムニストの天野祐吉さんは、「いま起きていることを盛り込みたい」とストック原稿は作らず、それどころかできあがった原稿を当日差し替えることもあったそう(亡くなった後の、朝日新聞の追悼コラムにありました)。 その理由が「ジャーナリズムの末席に居る者として」という意識からかどうかはわかりませんが、私らみたいな駄文書きでも、やっぱりタイミングは考えてしまいます。ネタが古いか新しいかは別問題で、要するにどのタイミングで扱うか、といったようなこと。
今回の場合ですと、『戦後70年』とか『平和ボケ論争』とか。あるいは『東京五輪エンブレム問題』とか、北斗星の運行終了に伴っての『テツと競馬ファンの心理』とか? でもまあエンブレム問題については一昨年に書いた『真似とパクリ』と被ってしまいそうですし、戦争関連は親から聞いた話はできるにしても、中身を練り込んでからでないと読むに耐えないものになりかねず、“テツと競馬”にしてもしっかり書きたいネタで…。要するに、どれも「今でなければ」という感じがないんでしょうか。そんなわけでまたタイミングを見てからに。
ということで、さてネタを決めたら、いよいよ書く段の話。 さきほど「決まった後は一気に」なんて生意気なことを書きましたけど、書き出しには気を使いまして、これがなかなか厄介なのです。それこそ落語における“マクラ”のように軽妙に進めることができればいいのですが。 そう言えば昨年、人間国宝に認定された柳家小三治さんは“マクラ”の名手として知られますが、高座が“マクラ”だけで終わることもあるとか?極端な話なのかもしれませんが、でも亡くなった立川談志さんが30〜40分の“マクラ”の後に噺を始めたのは映像で見たことがありますから、あながち人間国宝の伝説ではないのかもしれません。
というわけで、“マクラ”はそろそろ終わりにしましょう。
今週末、札幌競馬場で『ワールドオールスタージョッキーズ』が開催されます。
昨年の11月26日のブックログで、前身の『ワールドスーパージョッキーズシリーズ』の扱いが、気のせいかもしれないけれど、「業界全体で小さいのでは?」みたいなことを書きました。その際に、15年は札幌で開催されることになったことも。
そして4月12日付でJRAから、日程と『ワールドオールスタージョッキーズ』への名称変更、また“外国騎手5名、地方競馬代表騎手2名、JRAから7名の14人が出場。従来の個人戦に加えて、「外国騎手・地方競馬騎手代表」の混成チームと「JRA代表騎手」のチームに分けて、合計点を競う対抗戦を実施”ということが発表になりました。
個人戦は従来通り、そして団体戦はイギリスのシャーガーカップに範を取ったものと思われますが、個人戦の注目度は勿論のこと、昨今の外国人騎手と地方競馬出身騎手の活躍ぶりを考えると、団体戦でも異様な火花が散りそうで、個人的には気になって気になって仕方ないイベントです。
にもかかわらず、やっぱり気のせいなのか、まだ“業界全体の扱いが小さい”という印象が拭えずにおります。 「ジョッキーのシリーズ戦そのものに興味がない」と言う人達もいらっしゃるかもしれません。ほとんどテン乗りになる騎手が手綱を取るレースですから、馬券を買う際の信頼度に著しく怪しい部分が生じる可能性がありますのでね。そのあたりの理屈はわからなくもありません。 ですけどね、だからといってシリーズそのものを否定されるいわれもありません。馬券を離れてそれぞれのジョッキーの騎乗ぶりに注目するだけでも“次の馬券”に生かせるでしょうし、ハナからそういうレースだと思って馬券を楽しむこともアリのはず。 それこそ達人レベルのギャンブラーは、どちらの資質も有しているように思いますが、違ってますか?
札幌記念がG2賞金単独トップになった年に、同じ競馬場で新たに開催されることになったビッグイベント。確かに手探りには違いないでしょうし、難しい部分もあるかと思われます。でも、だからこそ今回の成り行きをしっかり見守りたい。 それこそ、遠くない将来の、“夏競馬の在り方”にまで思いを馳せて…。
美浦編集局 和田章郎
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