『進化するレジェンド』
ミナレットが再び、大仕事をやってのけた。2年10カ月前のデビュー戦を勝って今も破られてない3連単のJRA史上最高配当2983万2950円に大きく貢献した同馬が、先日のヴィクトリアマイルで3着に入線。今度はJRAのGTにおける史上最高配当記録2070万5810円という記録を演出した。WIN5でさえなかなか出ない2000万円を超える高配当記録に2回もかかわる稀有な存在。穴党にとっては女神に近い存在かもしれないが、その実像は?ここまでの経緯を辿ってみた。
デビューは夏の新潟の芝1400m。新潟の芝コースといえば日本で最長の659mの直線コースのイメージがあるが、内回りコースになると359m。決して短いとは言えないが、最後に坂がない分、先行有利のレースになることが多く、同馬の新馬勝ちもセンスの良さを生かしての粘り込み。それほど印象に残るようなものではなかった。その後は当然のことながら牡馬相手に重賞やオープンクラスで戦うことになる。7戦連続して6着以下が続くが、9戦目にして1勝馬同士のレースで5着を確保。単なる先行馬ではなく好位で我慢させる競馬を覚えて12戦目。ダービーが終わった次の週に2勝目を挙げた。だが、そこからは1000万クラスで古馬との戦い。簡単には結果が出ない。稽古をしっかり積んで馬体を増やし、持ち味の一瞬の脚を生かすようなレースを続け、徐々に力をつけて1000万クラスを2勝。昨年秋の段階で準オープンクラスまでステップアップしていた。
そこで訪れたのが大きな転機。まだ自己条件に出走可能な状態で、敢えて牝馬同士の格上相手に挑んだのが12月の中山のターコイズS。50Kの軽ハンデとスローペースも味方してまんまと逃げ切り勝ちを決め、ついにオープンへ。だが、そこでまたひとつ課題が。昨年、秋頃からゲートの中で落ち着きがなく出遅れるケースが目立ってきたのだ。それが、モロに出たのが次走のニューイヤーS。外枠の不利もあったが、先手を取れないと見せ場もなく終わってしまった。だが、そこで頭打ちにはならず、福島牝馬Sでは好スタートを決めながら、ハナにこだわらず、好走経験のなかった1800mで僅差の5着に健闘したのだ。そして迎えたのがヴィクトリアマイル。先行馬が少なくマイペースも可能なメンバーだったが、引いた枠順が18頭の大外。厳しい条件の中でハイペースを先行し、見事3着に粘ったのは記憶に新しいところだ。
ここまで振り返って気づかされるのは高額配当のダークホースの印象とは違い、大敗を続けて突然力をつけた訳ではなく、少しずつでも課題を克服して着実に地力アップをしているということ。確かに今回の大舞台での激走は想定外だったが、34戦のキャリアを積んで着実に成長してきた過程を考えると決してフロックとは言えない。今後もまたどこかで大仕事を遂げるかもしれない。更なる進化に期待したい。
美浦編集局 田村明宏