『笑ったり泣いたり……』
私が贔屓にしている某タテジマ球団、今シーズンの最後の最後で本来の姿を見せてくれました。その某タテジマ球団もかつてお世話になった名将・星野仙一監督の退任が伝えられたのは、この秋、9月18日のこと。年間勝率.281でスタートした東北楽天ゴールデンイーグルスを見事に日本一に導きながら、今シーズンは腰痛のため満足に采配を振るうことができず、無念の退任となったのです。 ところで、この星野監督退任の記事の中で触れられていた話題が、前年日本一からのリーグ最下位という、楽天のあまりにも極端な急落ぶりでした。ちなみに、前年にシリーズを制して日本一になりながら翌年にリーグ最下位に甘んじたという記録は、1960年→61年の大洋、1978年→79年のヤクルト、2010年→11年の千葉ロッテ、そしてこの2013年→14年の楽天の4例とのこと。この他に、前年リーグ優勝からリーグ最下位なった例として、1980年→81年の近鉄、2012年→13年の日本ハムがあるようです。 さて、いきなり野球の話題をしてしまいましたが、いま紹介した“日本一からの最下位”というこの記録、競馬の世界に置き換えると一体どんなものなのか? 厳格なクラス分けが存在する競馬界においては、1着→シンガリ負けくらいは日常のできごと。それでは、G1勝ち→次走シンガリ負けという記録ならどうか……。 それを調べた結果が以下の通りです。ちなみに時間の都合上、調査対象としたのはグレード制が導入された1984年以降の中央平地G1競走。そして、日本調教馬のみ。例によって極めて家内制手工業的な集計作業なので、間違いや見落としなどがあるかもしれませんが、悪しからず。なお、グレード制導入以前の記録も知りたいという方は、ぜひ自分で調べてみて下さい。
●G1優勝→次走シンガリ負けの記録
過去30年の記録を遡って確認できたのはこの12例。基準の引きどころが分からないため、12という数字が多いのか少ないのかさっぱり見当がつきませんが、まあ、ほとんどのケースはそれなりに納得のできる状況だったことは確か。レース間隔が大きく開いていたり、次走が海外遠征であったり、距離延長など条件が大きく変わっていたり等々。いずれもマー君のメジャー移籍に匹敵するくらいの理由といっても過言ではないでしょう。いや、多少は過言かもしれませんが……。 しかし、中にはなぜ? と思えるようなシンガリ負けもありました。それが、一番最初に名前の挙がっているタカラスチールです。1986年のマイルCSでは、あのニッポーテイオーをハナ差退けてのG1制覇。牡牝混合のG1に初めて優勝した牝馬としてこの年の最優秀古馬牝馬にも選出された同馬が、マイルCS優勝後に選んだレースが東の金杯でした。レース間隔は中6週、前走から距離が延びたとはいえ2F程度、そして何よりも、G1→G3で相手もかなり楽になっていたはずなのに……。 ただ、当時の競馬ブック当日版を掘り起こしてみると、この時のタカラスチールに関しては計10名の予想スタッフ全員が無印。実際に単勝でも8番人気とG1勝ち直後とは思えぬ下馬評でした。牝馬の57Kが実質的なトップハンデだったこと、そして、2000mがまったくの“未知の距離”だったことが嫌われたのかもしれません。そして結果は、その8番人気の低評価さえも大きく下回る16頭立ての16着。マイルCSまでは勝てない時でも常に手堅く上位争いしてきただけに、それはまさに、今まで張り詰めていた糸がプツンと切れたような大敗だったといえるでしょう。 とはいえこのタカラスチール、そんな不名誉なシンガリ負けの記録を補って余りある働きをしています。勿論、牡馬相手にG1を勝ち取っただけでも立派なことですが、実はこの馬、2歳(当時の表記は3歳)の7月にデビューしてから5歳の春に引退するまでの計32戦、休養を1度も挟むことなく中8週以内で出走していたのです。実に2年9カ月もの間、休まずにずっと走り続けてきたことを思えば、G1優勝直後のシンガリ負けなど、このタカラスチールにとっては取るに足らないことなのかもしれません。
●タカラスチール全成績
私の応援する某タテジマ球団は、日本シリーズで完膚なきまでに叩きのめされました。圧倒的な実力差を見せつけてくれたソフトバンクが、来年、不名誉な"5例目"にならないことをお祈りいたします。それから、後味の悪い胴上げになってすみません……。
美浦編集局 宇土秀顕