『スプリンターズSの狙いどころ』
秋のG1開幕。スプリンターズSは2002年以来、12年ぶリ2度目の新潟競馬場での開催となる。当時はビリーヴ、アドマイヤコジーン、ショウナンカンプが1/2、クビ差で1〜3着に入線する完全な先行スピード決着(勝ち時計は1分07秒7)。3頭が3、2、1番手を進み、残り600mの地点で既に他は圏外の様相だった。4角手前で2番手アドマイヤコジーンが仕掛け、逃げるショウナンカンプを目がけてスパート。ビリーヴはひと呼吸置いてショウナンの内に入ると労せずこれを交わして先頭へ。アドマイヤコジーンはショウナンの粘りに手を焼いたが、最後でグイッと加速して2着に上がった。4着ディヴァインライトとの着差は実に4馬身。差し、追い込みは出る幕がなかった。
内回りとはいえ、直線358.7mはローカル場では中京に次ぐ長さ。例年行われる中山競馬場の直線(310m)よりも長いのだが、コーナーの角度の影響があるのか、先週行われた芝内回り6鞍の結果も踏まえても、やはり先行、内有利ではないか。今週号の週刊誌スプリンターズSの「広角視点」で井上TMが「インを突いたら奇策とさえ映る外回りとはトラックバイアスは別物」と記していたが、先週のレースを観戦してまさに同じ印象を受けた。
戦前からハイペースが予想され、実際に前半3Fがレース史上最速の32秒9だったセントウルSの逃げ先行勢アンバルブライベン、メイショウイザヨイ、エーシントップが出走しない。1着リトルゲルダの回避も決まっている。久々ながらキツいペースの2番手を進み、2着に踏ん張ったハクサンムーンが実力上位のうえに展開も楽になりそうに思えるところに前記の馬場傾向。9→3、2→1、13→5と叩き2戦目でしっかり着順を上げる実績があり、寒い時季より暑い時季が合う性質、更に鞍上の今の勢いも加味すれば、勝利に近いのはこの馬でないかと思えてくる。
1頭気になるのがレッドオーヴァル。この馬の札幌での2走を改めて見返し、4コーナーの走りがギコチないと思った。こんな馬だっけ?とそれまでのレースもいくつか確認したが、4角のコーナーワークが一番良かったのが中京で圧勝した未勝利戦。こう何というか、コーナーを加速して回るぐらいの鋭さを感じた。そういえば、札幌から戻ったあとの調教で何度か重心のぶれない推進力の強いキャンターに見惚れたことがあったけど、全部左回りのときだった。そういえば、この中間は左回りのコースで丹念に長めを乗り込まれていることに気づく。左回りは(1.1.0.2)。オークスは距離、高松宮記念は不良馬場と明らかな敗因があり、サウスポーの可能性がある。日に日に体が膨らみ、芯から力がついたような逞しさすら感じる今なら、オークスの時のように長距離輸送で体を減らすこともないのではないだろうか。当日の馬体重と落ち着き度合がOKなら、ハクサンムーンと2頭で狙ってみたい。
栗東編集局・山田理子