『中京競馬場ライブ観戦』
競馬には四季折々の風景がある。もっとも解放感があるのはやはり夏。日差しが強く、場内はきらきらと光り、大人の夏休みを思わせる。気温と湿度が高く、生温かい大気が体にまとわりつくが、休日の娯楽ならば不快感はない。馬のおなかからはポタポタと汗が滴り、時には汗がこすれて鞍下や股に白い泡が見られるが、パドック、返し馬で元気ならばそれで良し。人も汗だくだが、それでも競馬場に訪れる競馬ファンたちはレースのたびにパドック、トラックコース、馬券売り場へと、互いの動線がぶつかりながらも活力的にクルクルと移動してライブを満喫する。
先週末は一泊滞在で、中京競馬場へ。相変わらずこの地域は活気があり、土曜午前9時過ぎに到着すると、入場門へと続く昇り道、歩道橋には絶え間なく人の流れがある。栗東本社から乗り合わせた車から降り、一泊滞在とは思えぬ大袈裟な荷物を抱えてひたすら上ると1年ぶりの中京競馬場の建物が懐かしかった。馬場は広くて大きく、一気に視界が広がる。ホームストレッチは長く、直線に向いてから1F手前まである急坂(西日本最大の勾配)は見るからにタフ。週半ばと前夜のまとまった雨の影響で、芝は重、ダートは不良でのスタートだった。行き道での空模様の変化や道路の湿り具合、早目に現地入りしていた人に聞いた前夜の強い雨の様子、競馬場での湿った大気に、JRAの馬場情報が合致する。もとよりタフなコースなのだから、水分を含んで、芝は軽い切れ味だけではつらいだろう。ダートは先行有利に拍車がかかるはずだ。……馬場のイメージは大方その通りだった。
馬場状態の把握はライブでこそだと痛感する。まず競馬場のアップダウンやコーナーの広さ、直線の長さなどじかに確認する意義が大きいし、芝の長さや傷み具合を確認し、当日の気温や湿度を体感するのも大事なこと。レース中に芝の塊が掘れて飛び散っているのを見れば、下が緩いのは容易に推察できる。そもそものコース形態がタフな中京競馬場は馬場が渋ってくるといっそう面白い。先週は雨の影響を受け、京都、阪神ではちょっと足りずに「甘い」とか「ジリ」のレッテルを貼られるタイプが、このコースで逆襲する姿がよく見られ、ふと笑みがこぼれた。京都や阪神で勝てなかったのは「弱い」からではなく、「特長」を生かせなかっただけ。ひとつギアが足りないようなタイプが、長くいい脚を使ってジワジワと渋太く競り勝って追い比べをモノにしていた。それから、外を通った場合の距離損もテレビより、生観戦の方がずいぶん理解しやすい。目前で走るサラブレッドは雄大で一完歩の動作が大きく、たとえ3〜4頭分であっても、終始外を回らされればトータルで開きが出て不利なのが臨場感で伝わってくる。
土曜には初めて障害競走1日2レースを体験して朝から興奮気味。プライベートでは大学時代の友人たちと20年ぶりの再会を果たし、親戚宅を訪ね、久々に名古屋の繁華街も歩き回って、盛りだくさんの2日間だった。中京競馬場名物売店のどて煮と、でっかいカレーパンをスルーしたのが心残りなので、次はそのふたつを忘れず食したい。
栗東編集局 山田理子