『東京春のGTシリーズを振り返る』
春の東京GTシリーズが終了しました。2012年から、安田記念が行われる3回東京が夏季の番組に編入されているので、厳密に言えばダービーまでが春のGT≠ニなりますが、まあ、そんな細かい話はさておき……。今年も無事に乗り切りました(笑)。 さて、1年前も同じようなことをやった記憶がありますが、今年も春のGTを記録・データ面から振り返ってみたいと思います。
▼ヴィクトリアマイル……皆勤賞は“ヴィクトリア”の称号 第9回ヴィクトリアマイルは、前年女王ヴィルシーナが11番人気の低評価を覆して逃げ切り勝ち。レース史上初となる連覇が達成されました。ところで、そのヴィルシーナも含めたヴィクトリアマイル優勝馬には1頭の例外(エイジアンウインズ)を除き、明瞭な共通点が見出せます。それは……。
@3才春のクラシックで3着以内の成績を挙げていたこと A3歳時に牝馬3冠競走に皆勤賞であったこと
1着候補に限ればズバリ、これが条件(ただし、ウオッカに関してはダービーをオークスに置き換えてます)。 この事実から導かれる真理は、“牝馬同士の1マイルという条件下では、晩成タイプの馬による逆転はまず起こらない“ということ。少なくとも3才春を迎えた時点でその実力が世代トップレベルに達していなければならず、更に、その後も一線級で戦い続けていなければ戴冠を許されるということです。 ちなみに今年のメンバー18頭の中で、この条件を満たしていた馬は、ヴィルシーナ、メイショウマンボ、ホエールキャプチャの3頭だけ。このデータに忠実に従っていれば、馬単28,050円をたったの6点でゲットできたところでしたが……。
<ヴィクトリアマイル優勝馬の3冠成績>
▼ダービー……3着率56.2%、5着率68.8% 競馬の祭典・第81回日本ダービーでは、ワンアンドオンリーが文字通り、7123頭の中の“One and Only”に輝きました。ちなみに同馬は昨年暮れのラジオNIKKEI杯2歳Sの優勝馬。(3着のマイネルフロスト、4着のタガノグランパも同じくラジオNIKKEI杯2歳Sの出走馬でした)。これで、ラジオNIKKEI杯2歳S優勝馬のダービーでの通算成績は下記の通りになりました。3着入着率56.2%、5着入着率は68.8%。直前のトライアルならともかく、ラジオNIKKEI杯2歳Sが本番から5カ月前の2歳重賞であることを思えば、この数字は立派の一語。そのラジオNIKKEI杯2歳Sは今年からホープフルSと改称され、中山芝2000mにモデルチェンジされます。それ故、この伝統が受け継がれるかどうかは微妙なところですが、無視できぬ存在であることに違いはないでしょう。 それにしても、問題はこのレース名。第31回として施行されるので、ラジオNIKKEI杯2歳Sから改称されたものであることに違いはないのでしょうが、昨年まで同時期、同条件で行われていたオープン特別とまったく同名というのはいかがなものか? この第31回ホープフルSの前年優勝馬≠ヘ決してエアアンセムではなく、あくまでもワンアンドオンリーなのでお間違いなく……。
<ラジオNIKKEI杯2歳S優勝馬のダービー成績>
▼安田記念……3週続けてハーツクライ! 第64回安田記念は東京のGTシリーズを締めくくるに相応しい好メンバーが揃い、勝った馬もまた、掉尾を飾るに相応しい世界のジャスタウェイでした。この勝利により、ハーツクライ産駒は3週連続でのGT制覇を達成(オークス・ヌーヴォレコルト、ダービー・ワンアンドオンリー、安田記念・ジャスタウェイ)。過去にサンデーサイレンス産駒が4週連続でGTを制覇していますが、それに次ぐ記録となりました。 なお、もし来週の宝塚記念でハーツクライ産駒が勝てば、同一種牡馬による施行機会連続GT勝利記録(4連勝)に並ぶことになります。現時点ではウインバリアシオンなど3頭が出走予定なので、可能性は十分にあるでしょう。ちなみに、その宝塚記念の次のGTがスプリンターズS。施行機会5連勝で記録更新というのは難しいかもしれませんが、何しろこの記録に関しては、今までサンデーサイレンスの独占状態。ハーツクライのこの活躍は非常に意義深いGT3連勝と言っていいでしょう。まあ、親子での寡占になっただけともとれますが……。
<同一種牡馬の施行機会連続GT勝利記録>
それにしても今回のハーツクライ産駒のGT3連勝、その内容を振り返ると……。まず、オークスのヌーヴォレコルトは圧倒的な支持を得ていた桜花賞馬を芝2400mで見事に逆転。そしてダービーのワンアンドオンリーもまた、皐月賞における約2馬身の差を400mの距離延長で大逆転。対照的にジャスタウェイは、秋の天皇賞4馬身差、ドバイDF6馬身差から一転して薄氷を踏む勝利。レースの勝因・敗因というのは様々な要素が絡み合っているものでしょうが、このあたりはやはり、ハーツクライ産駒らしいところと言えるかもしれません。 一方、ダービーではフジキセキ産駒との理由から距離が不安視されたイスラボニータですが、結果は2着。皐月賞でのワンアンドオンリーに対する0秒3差のアドバンテージがひっくり返り、逆に0秒1差をつけられる形になりました。問題はこの2着をどう受け止めるかですが、皐月賞で圏外だった馬ならともかく、少なくとも、イスラボニータはそこで頂点を極めた世代屈指の実力馬。ダービーにおいても、決して2着でよし≠ニいう存在ではなかったはず。対ワンアンドオンリーという観点に立てば、差し引きで0秒4差。この0秒4差が、「やはりフジキセキの血なのかなあ」というのが私の率直な感想です。勿論、そうではない可能性もありますが……。
美浦編集局 宇土秀顕