『スリープレスナイトはCBC賞で買うべきだった』
グリーンチャンネルの「栄光の名馬たち」には、いつも驚きと発見がある。過去の名馬たちのデビューからの足跡を振り返り、生涯成績あるいは現役生活の長い場合なら主要レースを1時間に編集した番組なのだが、1頭の馬に関しての完全なる縦の比較で、いいも悪いもギュッと凝縮されているから明快。この夏、8月16日に「栄光の名馬たち〜サマーセレクション」で取り上げられたスリープレスナイトを観て、「この馬の買い時はCBC賞での、頭の馬券だった」と痛烈に思った。
スリープレスナイトはご存じの通り、クロフネ産駒の牝馬。今でこそ“クロフネ産駒は牝馬が走る”が定着したが、2世代目(04年生まれ)のこの馬が初めての牝馬のJRA重賞ウイナーだ。3歳1月に京都芝1400mでデビューしたが、単勝1.9倍の支持に応えられず2着。中1週で臨んだ京都芝1600mでは単勝1.8倍で3着。その後、中2週でダート1200mに使って10馬身差で圧勝するとダートの1400m以下に的を絞って4歳5月までに1200mで6勝を挙げ、5月の栗東ステークスでオープンを連勝した後は適当な番組がないため、未勝利戦以来12戦ぶりに芝に戻して重賞に挑んだ。これが、CBC賞だった。4番人気ながら結果は楽勝。単勝770円。2着は2番人気スピニングノアールが入って馬単6080円。3着に12番人気のテイエムアクションが食い込んだことで3連単は231,120円もついた。最後の芝のレースから1年5カ月も経っていたから、現実的には芝適性に確信を持って馬券を買うのは難しかったかも知れない。でも「栄光の名馬たち」の番組内なら35分程度の時間の経過なのでレースの記憶は鮮明だ。芝2戦の内容はこうだった。
【デビュー戦(京都芝1400m)】……好発を切ったが、1400mで1000m通過が1分1秒7の超どスローのなかスピードが出過ぎないよう抑えて抑えて2番手。4角を回ってゆっくりと先頭に立つと、直線は左→右と手前を替えながら完全に押し切り態勢に持ち込んだが、ゴール寸前も寸前でハナだけ交わされた。 【2戦目(京都芝1600m)】……1F延び、京都マイルで1000m通過が1分1秒1のスローとなり、いっそう天性のスピードを包み隠すようなレース運び。遅いペースが合わずにスタート後のバックストレッチではアゴを上げ、口を割っていた。その後はすぐに対応して折り合って運んだものの、いざ追われてのギアチェンジで劣り、外からアッサリ抜き去られ、2着にもハナ差及ばずの3着に終わる。
坂路調教でスピードを見せていながらデビュー当初の芝2戦は流れが遅過ぎてそれを抑えるレースをしていたこと、ダートの成績とはいえ、1400mが(0.2.0.2)に対して1200mで(6.1.0.0)であり、1200mに高い適性を示していたこと、スタートダッシュはダートより芝の方が良かったこと、クラスが上がりメンバーが強化されても速さ負けすることはいっさいなくむしろ序盤は鞍上がなだめるぐらいの行きっぷりを見せていたことなどから推察すれば、初めての芝1200mでこそ買いだったのだ。
先週日曜の小倉競馬でひとつ会心のレースがあったが、芝、ダート、距離の条件替わりの狙いがばっちり嵌まった時の爽快感といったらない。だから、黙々と研究するのみ。今、この条件に使ってきたら買おうと自分のなかで温めている持ち駒が何頭かいるので、その日がくるのが待ち遠しくてたまらない。うまく事が運んで懐が温まるのを祈るばかりだ。
栗東編集局 山田理子