『来年のクラシック馬を私たちはもう見ているのかも知れない』
JRAでは2歳戦の開始が昨年までより2週間早くなった。6月第1週から始まっているので、およそ1カ月半が経過している。そこで2歳種牡馬ランキングがどうなっているかというと、これまでより3週間早い函館2歳Sの結果が反映されて、勝ち馬ストークアンドレイの父クロフネUSAがトップに立っている。入着賞金額の7495万6000円(JBIS発表、7月23日現在、2歳総合=中央+地方=)は前年同時期(7/12)トップのファスリエフUSAが2512万2000円、一昨年同時期(7/27)トップのフジキセキが3895万5000円だったのに比べると大幅に伸びている(資料管理の不備で「同時期」にズレがあるのはご容赦願います)。 賞金獲得機会が早まって仕上がり早やの種牡馬に有利になる序盤戦の傾向は当たり前といえば当たり前だが、今年のランキングで特徴的なのは新種牡馬の出脚が鈍いこと。一昨年はディープインパクトがこの時点で6位につけていたし、昨年はファスリエフUSA、ケイムホームUSA、ダイワメジャーの3頭が2歳種牡馬ランキングの1〜3位を占めていた。今年の場合は新種牡馬トップのブラックタイドがやっと16位、未勝利のチチカステナンゴFRが入着賞金で稼いで41位、ホッカイドウ競馬でフレッシュチャレンジに勝ったサマーフェニックスとJRAの新馬戦に勝ったマイネルホウオウの2頭が勝ち上がっているスズカフェニックスが41位、アルデバランUUSAが46位と50位以内に4頭が入っているに過ぎない。早期駆けで馬券的な妙味のある新種牡馬は今のところいないようだ。メイショウサムソンあたりはまだ7頭がデビューして未勝利、110位にとどまっているので、このあたりが秋を迎えてどの程度上昇してくるのかを見守りたい。 ディープインパクトの2歳産駒は、今年8頭が出走して2頭が勝ち上がり、ランキングは現在18位。初年度である2010年のこの時期は6位にいて最終的にトップとなり、昨年のこの時期は40位あたりから最後はやはりトップに立った。3年目の今年は消化したレース数を勘案すると昨年同様のスロースタートになっているようで、各厩舎のクラシック候補がデビューする札幌開催や秋の中央開催から急速にペースアップしてくる可能性が高い。 では、この時期、いわゆる夏競馬での2歳戦は早熟な馬ばかりで翌年のクラシックにはつながらないのだろうか。調べてみると実はそうでもない。過去10年のクラシック勝ち馬(秋華賞含む)のうち、6〜8月にデビューしたものをピックアップしてみる。
【桜花賞】 ・アパパネ……2009年7月5日(2回福島6日目) 【皐月賞】 ・ゴールドシップ……2011年7月9日(1回函館7日目) ・オルフェーヴル……2010年8月14日(3回新潟初日) ・キャプテントゥーレ……2007年7月8日(3回阪神8日目) ・メイショウサムソン……2005年7月31日(2回小倉6日目) 【オークス】 ・エリンコート……2010年7月25日(2回函館4日目) ・アパパネ……2009年7月5日(2回福島6日目) ・トールポピー……2007年7月8日(3回阪神8日目) ・ローブデコルテUSA……2006年7月23日(2回函館4日目) 【ダービー】 ・オルフェーヴル……2010年8月14日(3回新潟初日) ・エイシンフラッシュ……2009年7月12日(3回阪神8日目) ・ロジユニヴァース……2008年7月6日(3回阪神6日目) ・メイショウサムソン……2005年7月31日(2回小倉6日目) 【秋華賞】 ・アヴェンチュラ……2010年6月20日(3回阪神2日目) ・アパパネ……2009年7月5日(2回福島6日目) ・ブラックエンブレム……2007年8月12日(1回札幌2日目) 【菊花賞】 ・オルフェーヴル……2010年8月14日(3回新潟初日) ・ヒシミラクル……2001年8月11日(3回小倉初日)
次に軸を変えて年度ごとのクラシック馬の最速デビューを並べると、
・2012年組→前年7月9日(ゴールドシップ) ・2011→6月20日(アヴェンチュラ) ・2010→7月5日(アパパネ) ・2009→7月6日(ロジユニヴァース) ・2008→7月8日(トールポピー、キャプテントゥーレ、この2頭は同じレースで2、8着だった。勝ち馬はアーネストリー) ・2007→7月23日(ローブデコルテUSA) ・2006→7月31日(メイショウサムソン) ・2005→10月16日(ラインクラフト) ・2004→10月18日(スイープトウショウ) ・2003→11月2日(ザッツザプレンティ)
となる。 オルフェーヴル、アパパネとメイショウサムソンがどれも夏デビューだったことを含め、2006年以降は夏競馬デビュー組にクラシック馬が潜んでいることが分かる。なぜ2006年クラシックが境になるのかというと、理由のひとつは、その年はサンデーサイレンスUSA最終世代をメイショウサムソンが抑えた年であり、それまでは12月デビューの三冠馬ディープインパクトに典型的なように、秋まで温存しておいたサンデーサイレンスUSA産駒がクラシックの主役を務める傾向が強かったから。今年はどうなんでしょうか? 来年のクラシック馬はすでに私たちの前に姿を現しているのでしょうか? あるいはサンデーサイレンスUSAのあとを辿るディープインパクト産駒の晩秋デビューを待たなければならないのでしょうか? いずれにしても、夏競馬、特に2歳戦をしっかり目に焼き付けておきましょう。
栗東編集局 水野隆弘