『チチカステナンゴに想う』
どうも私はチチカステナンゴのことが好きらしい。一瞬の加速力に惹かれ、まだ500万にいるのは遊びがあって全力で走ってないからだと信じ込んで◎を打ち続けているスマッシュスマイルは半弟。大きなお腹と名前を愛らしく思うズンダモチは同じスマドゥン産駒(JRA唯一の登録馬)。この時期の2歳馬らしからぬガチッとした体格が頼もしく、秋デビュー組を待ち切れずにPOGで指名したニシノアプレゲールは父の記念すべき日本での初駆け。たとえ1着にならなくても、“まだ奥がある、表に出ていない何かがある”と思わせ、つき合いをやめられない魅力がこの血統にはある。父の現役時に懸命に応援していたわけではなく、日本での種牡馬入りに心ときめいたわけでもない。最初の出会いは、2010年夏のセレクトセールで当歳を間近で見たことだった。思いは心の奥底にずっとあった。2012年の夏を迎えて産駒たちがトレセンに入厩してデビューを果たし、この夏のセレクトセールで3世代目にしてラストクロップとなった当歳を見たことで、思いが再燃した。やっぱりいい。
2010年夏には、「セレクトセールを見学して」のタイトルで産駒について、ブックログのコーナーでこう書いた。 【父のことを写真でしか確認していないので多くは語れませんが、目にとまったフサイチミニヨンの2010はバランスが取れて体が逞しく、力強い歩き。アゴが丸いのも父似のよう。パドックでは気合を表に出すタイプが目についた】注:フサイチミニヨンの2010は「テナンゴ」という名前がついたようです。
2011年夏のメモはこう。 【全体の骨格のバランスが良く、肉づきのいい馬が多い。繋、爪は標準的な長さと角度。適性がどこにあるのかは難しいが、見た目に悪いところがない。おとなしい馬が多いので、サンデーサイレンスとの配合は合うかも】
そして今年夏は次の通り。 【バランスがいい。顔つきがいい。節々がしっかり。トモや肩に丸みと厚みがあり、凹凸のあるメリハリのあるボディ。歩きのリズムも良く、気性も素直そう(おとなしい?)】
残念ながら写真と映像でしか見たことがないが、顔を重視する私としては、“アゴ”のインパクトが大きい。まるでテニスボールでも入っているかのように、球型で丸々としている。アゴの発達は旺盛な食欲の証左であり、アスリートには重要な要素で、筋骨もしっかり。実戦に行ってギアがどれだけあるかが微妙なところだが、逞しさとタフさと身体能力の高さ、そして真面目さを感じる。 今年のセレクトセールでは1歳11頭全て、当歳7頭のうち5頭が売却された。最高取引額は1歳がシャイニンググラスの2011(牡・芦)で大城敬三氏によって5300万円で、当歳はスペシャルフロートの2012(牡・芦)で諏訪守氏によって5600万円で落札されている。
今週号の小誌連載ファーストクロップサイアー名鑑3で競走成績、血統背景が事細かに紹介されているので、ぜひともご覧ください。僅か3世代に賭ける血の継承。後継の出現を祈るばかりです。
最後に少し、セレクトセール2012に登場した目玉の新種牡馬ハービンジャー産駒について印象を。20頭が上場されて19頭が売却。父の産駒にはバラつきがなく、遺伝力の強さを感じました。 主な特徴は ・顔が細面 ・背が高い ・首、背、前後の脚とも長め ・長手の造りだが重さはなく、捌きが軽い ・発育は良さそうだが、贅肉はあまりない ・尻尾の位置、量とも理想的 ・個体差はあるが、多くが落ち着いた歩き
とこんな感じ。仕上がりは意外と早いも知れないが、長手の造りなので、適性はやはり芝の中距離でしょうか。
ちなみにディープインパクト産駒は2日間見た限りでは、以前のようなヤンチャさがなく、落ち着いた歩きをしていたのが第一印象。体も小ぶりでなかったので、特徴は少し変わっているのかも。
栗東編集局・山田理子