『きさらぎ賞が終わるともう春』
きさらぎ賞が終わると、クラシックが一気に近づくように思える。今年のように強い馬が鮮やかな勝ち方をすると一層その感が強い。勝ったワールドエースの、暮れの阪神開催でデビュー勝ち→1月の京都で伏兵に足をすくわれ→きさらぎ賞で巻き返したステップは14年前のスペシャルウィークと同じ。この後どのような成長を見せるのでしょうか。
ところで、まもなく中京競馬場が新装開店を迎える。ふと、この機会にきさらぎ賞を元の中京に返してはどうか? これええ考えやんと思ったのだが、中京開催は3月なので名前にそぐわない。そもそも、きさらぎ賞が中京1800mから京都に移って既に25年、京都内回り2000mから外回り1800mに替わって21年が経過しているので、中京に返すという発想そのものがおっさんであったと気付く。
唯一の左回り(ほぼ)平坦小回りだった中京の個性を殺してコースを拡大してしまったことの是非はおくとして、せっかくミニ東京というべき設定となったのだから、ダービーへのステップとなる芝2000m前後の3歳オープンを置いてもいいと思うのだが、発表された番組によると芝2200mの3歳戦が最終週に500万特別としてひとつあるだけ。これはもったいない。皐月賞を諦めて(諦めなくても)ダービーを目標にする場合、青葉賞やプリンシパルSに出走権獲得を賭けるのはギリギリの崖っぷち感が強い。3月に左回りの経験を積んで賞金加算が可能になれば随分余裕ができる。
たとえばケンタッキーダービーが今も高い人気を誇るのはニューヨーク、フロリダ、中部、西海岸と、それぞれの地区を勝ち上がってきたものが一堂に会してどれが一番強いのかを決める形を取っているため。イギリスでも4月末から5月始めにダンテS、チェスターヴァーズ、ディーS、クラシックトライアル、ダービートライアルと重賞だけで5つのプレップレースがたて続けに行われ、そこに更にアイルランドからの組が加わる。多くの路線がダービーひとつに集中する仕組みになっているわけだ。
競馬のサイクルの中で、2歳デビューからダービーまでの1年間はスポーツ性と興行性、血統の選抜というさまざまな目的が一致する時期。ここが番組編成の柱となるのは当然だし、より多くの路線、多様なステップを確保しておくことは、ダービーにより多くの強い馬がより良いコンディションで出走できるようにするためには必須だろう。その点で新しい中京競馬場を活用できなかったのは惜しい気がする。
栗東編集局 水野隆弘