『2011外国馬おさらい』
このコラムも今年のラストターン。総決算的G1はいくつか残っているが、東京大賞典に外国馬の出走はないようなので、今年日本で走った外国調教馬をまとめておきたい。高松宮記念には香港のジョイアンドファンとグリーンバーディーが直前まで出走の構えを見せていたが、前者は3月14日に、後者は3月16日に辞退を申し入れている。当時は東電福島第一原発で起きていることが日本に住んでいる私たちにも知らされていなかったのだから、妥当な判断だといえる。
【天皇賞(春)G1】5月1日、ジェントゥー(セン7歳、調教地:仏国)この年最初に日本の土を踏んだジェントゥーは前年秋にカドラン賞(4000m)、ロイヤルオーク賞(3100m)と超長距離G1を連勝したフランスの遅咲きのステイヤー。中団やや後方から直線もバテずに流れ込んで9着だった。帰国後は8月のドーヴィルで復帰したが、5戦して勝ち鞍なし。復調に手間取っている。
【安田記念G1】6月5日、ビューティーフラッシュ(セン6、香港)、サムザップ(セン7、香港)2010年11着から2年連続出走となるビューティーフラッシュは、その後香港マイルと国内G1の2勝の計3勝を加えた。ドバイにも遠征して、実績を積み上げての再来日だったが、掛かり気味に先行して直線では伸びなし。帰国後は昨年同様10月のナショナルデイCで復帰。3戦して大目標である今週末の香港マイル連覇に挑む。サムザップはときに強敵相手に善戦することもあるが、その瞬発力を発揮できないまま流れに乗り切れず11着に終わった。10月30日のシャティンT3着から11月20日の香港ジョッキークラブC快勝を経て、香港ヴァーズに出走予定。シンコウキングの仔が2400mのG1に勝ったらそれはそれで痛快。
【サンタアニタトロフィー】8月3日、レッドアラートデイ(セン6、米国)2歳時にイギリスでG3の2着があったが、4歳春の渡米後は芝ばかり出走して重賞に足りないクラス。日本でもやはりスピード不足だった。競走中止の1頭を除くと最下位15着。
【セントウルSG2】9月11日、ラッキーナイン(セン4、香港)、グリーンバーディー(セン8、香港)2010/11シーズンに急速に頭角を現してきた4歳馬ラッキーナインが内を進出して2着。59キロを背負っての好走で力を示した。前年のこのレースで2着だったグリーンバーディーはその後より強い相手を求めてドバイ、シンガポールと転戦したが、結果としては伸び悩み。セントウルSではさすがといえる差し脚を見せたが、4位入線から14着に降着。
【スプリンターズSG1】10月2日、ロケットマン(セン6、シンガポール)、ラッキーナイン、グリーンバーディー セントウルS組の2頭に加え、ここで真打ちとばかりに北半球最速スプリンター・ロケットマンが登場。しかし、逃げられぬ上に外から被される苦しい流れが応えたか、最後までこの馬らしい加速は見られなかった。それでも4着だから力は確かなんですけどね。この秋最大のガッカリではあった。11月11日に地元のオールウェザー1200m戦を楽勝して、香港スプリントで名誉回復を期す。ラッキーナインはセントウルSの結果を受けてここでもでも人気を集めたが、直線入り口で不利があり、立て直して追い上げたが5着に終わった。香港スプリントで復帰。グリーンバーディーは外から差を詰めはしたものの8着。こちらも香港スプリントで復権を目指す。
【エリザベス女王杯G1】11月13日、スノーフェアリー(牝4、英国)、ダンシングレイン(牝3、英国)昨年の鮮やかな末脚が記憶に新しいスノーフェアリー。今年は勝ち鞍に見放されてはいたものの、戦うクラスを1段階(以上)上げて牡馬の一線級に一歩も引かなかった。エリザベス女王杯では逃げ馬以外はスローだった馬群の後方、直線も内に進路を取って、残り1Fでは万事休すかと思われたところ、100mでグイグイ伸びた。その後は昨年同様ジャパンCを回避、香港に渡って香港カップを目指したが、怪我で断念して帰国。来年の現役続行を目指すという。ダンシングレインは英、独オークス、古馬相手のチャンピオンズフィリーズ&メアズSを逃げ切った。レースでは出遅れて後方から。戦前の予想では逃げ馬不在のメンバーだけに、楽に行ければ浮かぶ瀬もあるかと思われたが、そもそも、普通に出ても逃げられませんでしたね。
【マイルチャンピオンシップG1】11月20日、サプレザ(牝6、仏国)、イモータルヴァース(牝3、仏国)過去2年同様サンチャリオットS勝ちから臨んだサプレザは過去2年同様外から差し届かず今年は3着。香港マイルに出走。イモータルヴァースは3歳牝馬限定のコロネーションSを圧勝したばかりか、ジャックルマロワ賞ではゴルディコヴァを奇襲で撃破。しかし、硬い馬場を求めて日本に来ているのに雨で稍重となったのが不運。1F標前後で一瞬さすがといえる伸びを見せたが、そこまでだった。
【ジャパンカップG1】11月27日、デインドリーム(牝3、独国)、シャレータ(牝3、仏国)、サラリンクス(牝4、仏国)、ミッションアプルーヴド(牡7、米国)2着に5馬身差、2.24.49というレースレコードのおまけつきで凱旋門賞を制したデインドリームが1番人気となったが、序盤ゴチャついて後方から進み、遅いペースで外を回ってねじ伏せられるほどブエナ姐さん以下甘くはなかったということ。凱旋門賞では先行策から2着に粘ったシャレータも中団追走では持ち味が出ず。香港ヴァーズを予定していたが、フランスに戻った。これら2頭は3歳牝馬。経験を積んでの再来日を待ちたい。サラリンクスは理想的に運んで内から抜け出したカナディアン国際の再現はならなかった。上がり34.3はこの馬なりには限界近くまで頑張っているのではないだろうか。香港ヴァーズに出走予定だが、少し力のいる香港の馬場で相手関係も楽になるので、あっといわせる可能性はある。ミッションアプルーヴドは逃げて力通りの結果。
合計15頭が日本の土を踏んだ2011年。結果はともかく、まとめてみるとよくこれだけの名馬名牝が集まったものだと思う。強い馬が自然と集まるようになるのが世界競馬の中での理想的な位置だとすると、これを維持していくことが大切だ。かつてのワシントンDC国際から現在のジャパンカップやブリーダーズカップ、ドバイワールドカップまでの例が示しているように、一点豪華主義の高額レースは世界のどこでも創設から20年もたてば飽きられて衰退に向かう。しかし、世界中の牝馬がエリザベス女王杯を目指すようになったり、欧州の名マイラーが小回りのブリーダーズCよりマイルチャンピオンシップを選ぶといった多くの選択肢があれば、それも避けられるだろう。