波乱に満ちた 日曜日
先週末は日本馬2頭が挑戦する米ブリーダーズCに注目していたが、レースが行われたのが朝の慌ただしい時間帯だったことに加え、フィリー&メアターフのレッドディザイア、クラシックのエスポワールシチーともに本来の走りが見られずに敗退。残念な結果になってしまった。レッドディザイアは中団で前に馬を置く形で位置取りとしては悪くなかったが、画面から受ける印象としては行きたがるのをなだめながらの追走。その様子を見て嫌な予感がしていた。折り合って流れに乗ると素晴らしい脚を使うレッドディザイアだが、11着に敗れた春のドバイワールドCを再現しているようでもあった。遠征先での環境の変化に戸惑いがあったのか、はたまた鞍上K・デザーモとの呼吸が合わなかったのか、敗因についてはいろいろ考えられるが、機会があれば当時の状態やレース内容について松永幹夫調教師に取材してみたい。一方のエスポワールシチーについては渡米前に佐藤哲三騎手から「厳しい挑戦を覚悟している」とのコメントを聞いていた。たしかに、スパイク蹄鉄も日本のダートとは質の違う米国の馬場も初体験で、しかも相手は世界の強豪揃い。条件は想像以上に厳しかったはずだ。直線で一旦先頭に立とうとしたところで一杯になったが、いつも通り果敢に攻めるこの馬の競馬をしたあたりは“哲ちゃん”らしかった。
日曜日はいつも通り遅めに出社するとグリーンチャンネルで流れるブリーダーズCクラシックのVTRをスタッフ数人が見入っている。すぐそれに加わってテレビ観戦。内で失速するエスポワールシチーと入れ替わる形で差してきた女王ゼニヤッタの末脚を日本馬に譬えれば後方一気のミスターシービー(!?)。凄い伸びを見せたものの北米新記録の20連勝は叶わなかった。「あそこまできたんなら交わして欲しかったな」と独り言をつぶやいて自分の席に戻ったところで波乱に満ちた日曜日が始まる。まずは前夜ファックスで送られてきたある週刊誌原稿の左端の数文字が切れていて読めない。慌てて執筆者の方の自宅に電話を入れると、な、なんと留守電。やむなく携帯電話にかけ直してもやはり留守電。途方に暮れていると今度は別件で掲載記事の差し替え希望の連絡が飛び込んでくる。それもあろうことか間もなく印刷に入ろうかというページ。大慌てで担当者と連絡を取ってギリギリに差し替えが終了した瞬間、留守電を入れていた相手から電話が。こちらも締め切り寸前だったため早急に対応してもらうことで一段落。そこからは狙っていた八坂Sの馬券を買おうとパソコンと睨めっこ。そうこうしているうちにまた新たなトラブルが発生する。
JRAから発表された次週の特別登録馬に目を通して顔面蒼白、茫然自失。私が担当したG1レースの“2週前の有力馬チェック”で取り上げた7頭中2頭の名前がなかったのだ。予定馬のうちの1頭が登録していなかったケースはままあるが、複数頭が登録していないのは私が知る限り初めて。事実確認すべく厩舎担当者と連絡を取りつつ、ページ修正のために画像部へと猛ダッシュ。この段階でパソコン画面に購入馬券を打ち込んで、あとは送信ボタンを押すだけになっていることなどまったく忘れていた。というか、構っていられなかったのである。レイアウト担当者と話し合って件のページの処理が終わったのが十数分後。この段階で八坂Sはすでに終了していた。周囲に聞けば馬券の当たり外れはすぐわかったが、結果を聞いて取り乱すのが嫌だったので誰にも尋ねず競馬ブックHPの『成績速報』をチェック。購入していれば八坂Sの5倍強の単勝とほぼ1点の馬連は見事に的中していたのだった。嗚呼……。
その後、買う予定のなかった京都12レースに手を出して逆転を狙ったが外れ。本来ならそれなりのプラスを計上するはずだったこの日の馬券作戦は完敗に終わった。幾つになっても競馬(馬券)の結果に振り回される性格が変わらないのは情けないが、ものは考えよう。やれ馬券が当たったの外れたのと目先のことに一喜一憂する生活を送れているからこそ日々鬱積したストレスを軽減できているのだろう。この天性のお気楽さを受け止めつつ黙って放置してくれている現在の人的環境も含め、いろんなことに対して感謝の念を抱くべきなのかもしれない。日曜日の夜は柄になくそんなことを考えながら酒を飲み続けた。
競馬ブック編集局員 村上和巳