・キクノサリーレ ・サクセスブロッケン ・エスポワールシチー ・カジノドライヴ ・フェラーリピサ ・ヒシカツリーダー ・バンブーエール ・サンライズバッカス ・カネヒキリ ・ヴァーミリアン
2月8日(日曜日)の夕方にJRAからフェブラリーSの最終登録馬が発表された。ファックスで送られてきた馬名に目を通して困惑した。普段から上級条件のレースは現場取材班が予め作成した想定メンバーに基づいて週刊競馬ブックの記事を作成している。ヴァーミリアン、カネヒキリ、ダイワスカーレット等の有力各馬の近況を紹介する2月9日発行号の『2週前の有力馬チェック』のページは完成していたが、そこでカジノドライヴは賞金不足で出走できないと読んで取り上げなかった。しかし、発表された出走決定順位では17位、つまり次点だった。ハイレベルと読んだ他陣営の路線変更や体調不良で回避する馬が出たことでカジノにチャンスが訪れたのだが、1600万を勝ったばかりの馬が次走で古馬G1戦に出られることは稀有である。
細かくメンバーを調べると事態は更にややこしい。滑り込み16位のカフェオリンポスは1週前(2月14日)の京都アルデバランSにも登録している。つまり、計算上ではこの馬が1週前のこのレースに使ってG1を回避すればカジノが出走可能、連闘すれば不可能となる。取材班によるとカフェは連闘予定を組んでいるという。ただ、サラブレッドの体調は日々変化する。様々な可能性を考えて、出走予定16頭以外の馬の記事も準備する必要がある。『2週前の有力馬チェック』で近況を紹介できなかったカジノだが、翌週、つまり当週号のフォトパドックや有力馬考課表には加えておきたい。そこで翌9日に厩舎担当者に電話を入れ、短期放牧中のカジノの帰厩予定を取材して日程が合えばカメラマンに立ち姿を撮影するように指示してくれと頼んだ。
この週の初めに美浦へ戻ってきたカジノドライヴの写真撮影は11日に無事終了。これで通常業務に打ち込めるとホッとした矢先、編集部内に佐賀記念のファンファーレが鳴り響いた。結果はスマートファルコンが勝ってロールオブザダイスが2着。「まずは順当に収まったな」と独り言を呟いて席に戻ろうとした瞬間、この結果でフェブラリーSの出走決定順位が入れ替わることに気付いた。賞金900万を加算したロールは、カジノとカフェを抜いて15位に進出。カジノは次々点にまで下がってしまった。こうなるとまたまた状況は変化する。有力馬ではあっても次々点の馬の記事を週報に載せるのは少々無理がある。周囲からも同様の声が挙がったこともあり、カジノ関連記事は補欠扱いとして掲載を控えることにした。
翌12日。早朝に松田国英厩舎の取材担当者から「ダイワスカーレットが出走を回避」との一報が届き茫然自失。ダイワの様子が気遣われるのは当然だが、まずはカジノの扱いについて冷静に考えなくてはいけない。一議席空いたとはいってもカフェとロールが出走してきた場合には次点でしかないが、そうなったらそうなったで仕方ないと最終決断。カジノをフォトパドックと有力馬考課表に改めて加えることにしたが、二転三転したあたりで私の思考力は限界を迎えていた。この出走決定順位争いの余波はその後も続いた。土曜日のアルデバランSで11番人気のカフェオリンポスがハナ差2着に好走。編集部内に「56キロなら怖いと思ってた」「やっぱりG1に登録するだけあるな」といった声が飛び交った。そして、翌日には取材班から「繰り上がってカジノドライヴが使えそうな情勢になってますよ」との連絡が入った。しかし、すでに週報の製本がはじまる時間帯。これ以上は手の施しようがないと諦めたが、レースの1週前から疲れ果ててアゴが出ていた。
事態は三転四転し、そして私は七転八倒した。ここまでもつれたのだからせめてこのフェブラリーSの馬券ぐらいはなんとか獲りたい。そう考えて火曜日は定例会議の間ずっと週報にかぶりつき、普段以上にG1特集ページを熟読。私なりの結論を出した。◎キクノサリーレ○ヴァーミリアン▲カジノドライヴ△カネヒキリ×フェラーリピサ。人気が予想される2頭はフォトパドックの姿にもうひとつ感じるものがなかったぶん評価を落としてみたのだが、人気通りにワンツーでこられた場合には責任を取って髪でも切りに行くつもりでいる。周囲に圧倒的不評のキダタロー・カットにもそろそろ飽きがきたので。
競馬ブック編集局員 村上和巳