・アグネススターチ ・オウケンブルースリ ・シゲルフセルト ・スマートギア ・スマイルジャック ・ダイシンプラン ・ダイワワイルドボア ・ノットアローン ・ベンチャーナイン ・マイネルチャールズ ・ヤマニンキングリー ・ロードアリエス
栗東編集局のスタッフAが土日の想定表を見ながら独り言をつぶやいている。どうしたのかと声をかけてみると下記のような言葉が返ってきた。その独特の発想にはブッ飛んだと同時に、現場取材班として新聞紙面に予想をしていた頃の忘れかけていた自分の姿を思い出してもいた。当時は常識にとらわれた予想や型に嵌まった予想が大嫌いで、かといってなんでもかんでも穴オンリーというスタンスの予想も好みではなかった。きちんとした能力比較さえできれば固いところは点数を絞って固くまとめ、中心不在で波乱含みのレースは大胆かつ細心の分析をして穴馬を発見する。これが予想者の理想と信じていた。そのためには各馬の能力(潜在的なものも含め)を正確に把握する必要があるのだが、これが実に難しかったのである。
「いや、10レースの清水S(1600万条件、芝1600メートル)に使ってくるポルトフィーノの評価が難しいんですよ。このレースはスピリタスって馬が相当強そう。春以来の実戦でこの馬を負かせると踏んで本命を打つか、それとも無難に対抗か3番手ぐらいにするかが鍵。ポルトフィーノ自身は程よく仕上がってますし、春よりもひと回り成長している感じ。秋華賞に出られれば迷わず本命にって考えてたんですけどね。えっ?だって今年の3歳牝馬は弱いでしょ。準オープンクラスとはいっても清水Sの方が絶対に強いと思ってますから」
秋華賞は6、7番手につけたブラックエンブレムがソツのないレース運びで鮮やかに抜け出した。2着にムードインディゴ、3着には滑り込みで出走したプロヴィナージュが入って3連単で1000万馬券が出る大波乱。終わってみれば外差しのきかない馬場で、しかも典型的な平均ペース。内目を回るうまいレースをした馬や先行組が上位を占めた。春とはまるで違う調整パターンで臨んだブラックエンブレム、そしてギリギリまで体調をチェックした上で出走に踏み切ったプロヴィナージュ。この2頭を管理して結果を出した小島茂之調教師の仕上げは見事というしかない。桜花賞馬、オークス馬がそろって完敗し、1600万クラスの馬が3、4着に健闘したことを考えるとAの分析通り今年の3歳牝馬のレベルはそう高くないと言えそうだが、それはあくまで現段階でのこと。古馬混合となる女王杯以降のレースでポルトフィーノを含めた3歳牝馬世代の活躍に期待したい。 現場時代は“前走で好走した馬を追いかけず、凡走後に一変する馬を探すこと”が私の予想の基本だった。とはいっても、他のスタッフ全員が本命で自分ひとりが無印の馬に楽勝されたときのショックはキツかったし、熟考に熟考を重ねた上で本命にした人気薄の馬が凡走したときも激しく落ち込んだ。ラジオで解説をするようになってからは状況が更に厳しくなった。まずは予め自分の予想の根拠を説明することが必要となり、レース後にはその根拠(仮説)が誤っていたことを認めなくてはいけない。結果を素直に受け入れられる場合もあればしどろもどろになることも少なくなかった。しかし、固いと信じた1点予想が的中したり狙い撃ちした人気薄の馬が好走することも稀にはあった。そんな至福の瞬間があるからこそ予想が好きだったのだが、最近は多忙を言い訳に以前ほど予想にも馬券にも身が入っていない。ビッグレースぐらいはもっと熱くなりたいと思う。
さて菊花賞。ダービー馬ディープスカイが天皇賞に向かい、神戸新聞杯2着のブラックシェルもリタイア。混戦となってきた。レースを経験する毎に新たな強さを身につけているオウケンブルースリに注目が集まりそうだが、問題は当日の馬場状態。秋華賞時と同様の馬場なら外目を回って追い上げるこの馬には厳しくなりそうだ。それでもアッサリ抜け出す可能性を否定しないが、インを捌ける小器用な脚質の馬(騎手)を狙うのが面白いかも知れない。ただ、馬場状態は刻々と変化するもので、当日の傾向をチェックする作業は欠かさないようにしたい。個人的に注目しているのは現役時代に縁があったレディバラードの仔ロードアリエスだが、現段階では抽選の対象。無事に出走してくればちょっぴり馬券を買って応援しようかと思っている。
競馬ブック編集局員 村上和巳
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