・ウオッカ ・カンパニー ・サクラメガワンダー ・サンライズマックス ・スーパーホーネット ・トーセンキャプテン ・ドリームパスポート
・アイポッパー ・アドマイヤジュピタ ・アルナスライン ・デルタブルース ・トーホウアラン ・ポップロック ・マンハッタンスカイ
スプリンターズSはスリープレスナイトが勝った。外国馬の参戦がなく年長の強豪の姿も見当たらなかった今年のこのレース。いわば世代交代期にさしかかっていたとも解釈できるが、正攻法で危なげなく抜け出したこの馬の勝ちっぷりは見事の一語であり、昨年のアストンマーチャンにつづく現4歳牝馬世代の連覇達成となった。ウオッカ、ダイワスカーレットに代表されるこの世代のレベルの高さについてはすでに語り尽くされた感もあるが、4歳になってからも新たなスターが出現して結果を出すのだからその層の厚さには驚かされる。エリザベス女王杯で復帰予定のダイワスカーレットはここにきて熱のこもった調教を積み重ねており、今週の毎日王冠で秋のスタートを切るウオッカとともにこの秋は大いに注目を集めることになりそうだ。この2頭の直接対決は有馬記念になる見込みで、牡馬陣も含めた有力各馬は無事で暮れを迎えて欲しいものである。
このスプリンターズSが行われた10月5日にはもうひとつ見逃せないレースがあった。日本時間の深夜11時40分にメイショウサムソンが挑戦する凱旋門賞が行われるのだ。普段の日曜日は8時前後に帰宅してチビチビと酒を飲むが、1週間の蓄積疲労と翌日が休みという開放感が入り混じって11時前には泥酔するのが常。しかし、この夜はアルコール抜きの夕食にして酔い潰れるのを防ぎ、更に9時すぎからは2階の自分の部屋にこもってPCで趣味のデータ整理に取り組んだ。飽きっぽい性格を考えてBGMも流す用意周到ぶりで、選んだのはビートルズが1968年の11月に発表したホワイトアルバム(The BEATLES)。このCDを聴くのは何年ぶりだろうと考える間もなく懐かしい曲が次々と耳に飛び込んでくる。“While My Guitar Gently Weeps”でギターソロが流れると、この部分はジョージ・ハリスンの依頼で助っ人参加したエリック・クラプトンが弾いてたんだよなと呟き、2枚目の最後の“Good Night”を聴くと、ロック喫茶をやっている頃はこの曲をよく閉店ソングにしていたなと独りで懐かしんだりもした。そしていつの間にか右手にはバーボンの入ったグラスが握られていた。
それからしばらくは泥酔一歩手前の状態だったが、凱旋門賞に出走する各馬がゲートインする瞬間には別人のように覚醒してテレビにかじりついていた。ここ数年とは比べものにならないハイレベルな戦いと評判の欧州最高峰のレースとあって、日本馬では苦戦を免れないだろうと思いつつも、レースがはじまるとそれなりの緊張感があった。心底競馬が好きなんだなと改めて思った瞬間でもあった。レースは勝ったフランスの3歳牝馬ザルカヴァの圧倒的な強さばかりが目立ち、メイショウサムソンは差を詰めにかかったところでゴチャつく不運もあって無念の10着。日本馬は8度目の挑戦でもまた世界の壁の厚さを知らされる結果となった。サイモン&ガーファンクルの“El Condor Pasa”を聴きながら熱狂した1999年、そしてディープインパクトが歴史を塗り替えると信じて疑わなかった2006年に比べると落胆の度合いが少なかったとはいえ、やはり疲れた。
オペラハウス(サドラーズウェルズ)×ダンシングブレーヴの配合といえば重厚なヨーロッパ血脈。その血を受け継いで成長した日本馬が里帰りするかのように本場の大レースに挑んだのは日本の競馬ファンとして嬉しい出来事だった。私のような競馬好き中年オヤジが日本とは比較にならないほどたくさんいるはずのヨーロッパで、そのなかの何人かが凱旋門賞出走馬のプロフィールを眺めて、“東洋にもワシの好きやった血統の馬がおるんやな”と独り言を呟きながらメイショウサムソンの単勝を買っていたかもしれない。そんな場面をあれこれ想像しながら、この日は深夜まで繰り返しホワイトアルバムをかけて延々と酒を飲みつづけた。
競馬ブック編集局員 村上和巳
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