・キャッチータイトル ・ダイシングロウ ・トウショウヴォイス ・マイネルキッツ ・ミストラルクルーズ ・ミヤビランベリ
・キングストレイル ・キンシャサノキセキ ・トウショウカレッジ ・ビービーガルダン ・ピンクカメオ ・プレミアムボックス ・マヤノツルギ
このコラムではなるべく競馬ネタを取り上げるようにと心掛けているが、その時々の流れにまかせて音楽ネタだったり昔話だったり周囲で起こった間抜けな事件だったりと好きなことを勝手気ままに書き殴っているのはご存じの通り。一旦書き終えた段階で自分の文章を読み直してみると支離滅裂で頭が痛くなることもそう珍しくはないが、あれこれ構えたりせず本音を綴るように務めている。そういう訳で、先週に引き続き北京オリンピックを観戦して感じたことを書いてみる。今週のテーマは日本野球の敗退について。単なる素人の無責任分析に終始しそうで申し訳ないが、一野球ファンとしての思いをぶつけてみたい。
日本のかなりのメディアが集団ヒステリー状態になっている。星野ジャパンがメダルを獲れずに敗退したことを憤っているのだ。3位決定戦の相手となったアメリカは元メジャー、3A、2A、学生といったメンバーの混合チームであり、メジャーのビッグネーム不在の寄せ集めチームに競り負けたあたりはたしかに情けない。代表監督が友人ふたりをコーチとした人選に対する批判が飛び交い、一部のメディアでは不振だった選手を責めるコメンテイターまで現れている。日本代表の敗戦を想定外とする考え方が主流だからこそこういった反応が出ているのだろうが、各ゲームを振り返ってみると日本は負けるべくして負けていたように思う。今年のオリンピックに限って言うなら、残念ながら日本チームは総合力において上位3国よりも明らかに見劣っていた。
予選、準決勝、3位決定戦と9戦して4勝5敗。韓国、キューバ、アメリカには5戦5敗。序盤こそ接戦していても最後には必ず相手に突き放された。この成績を見る限り上位国と日本との実力差は歴然としていた。体調面の不安を抱える選手が少なくなかったことに加えてミスと思える采配も目についたが、結局のところは日本の標榜する“スモールベースボール”が他国のパワー野球に粉砕されたということではないか。若手先発陣は精一杯投げたが、彼らはあくまで制球力とコンビネーションで相手を封じ込めるタイプ。ストライクゾーンが一定でない国際舞台で持ち味を完璧に出し切るには無理があった。期待されたパワーピッチャーのダルビッシュでさえ本領を発揮できないまま終わったのだからもうお話にならない。また、救援陣にも大いに問題があった。近年の登板過多による影響なのか藤川は2年前あたりと比べると球威そのものが明らかに落ちていたし、岩瀬、上原に至っては今季の成績で代表に名を連ねたこと自体が不思議だった。タイムリー欠乏症に支配されて誰ひとりベストパフォーマンスを演じられなかった打撃陣については論外である。多少の誤算はあったにせよ、この戦力で「金メダル以外は考えていない」と言わざるを得なかった監督の立場を考えると同情してしまうが、もしこの発言が本気だったとしたなら、あまりに楽観的すぎるとの誹りを免れまい。
それでは代表選手選考に問題があったのかというとそれも違いそうだ。セ、パ両リーグの投手部門、打者部門で上位の成績を残している選手の大半は外国人選手であり、残る日本人選手のなかで今回のオリンピックで新たに代表選手入りして流れを劇的に変えられる実力のある人間がいたかとなると答はノーである。以前と比べるとイチロー、松井秀喜、松坂大輔をはじめとするメジャー組が不在の日本球界のレベルは確実に低下しており、トップレベルの選手層の薄さが浮き彫りになっている。つまり、パワーで相手を捻じ伏せられるような核となる選手もいなければ、一昨年のWBCで日の丸を背負ってチームメイトを引っ張ったイチローのような実力派リーダーもいない。そんな日本チームに金メダルを求めること自体に無理があったのではないか。帰国後に川崎、新井の疲労骨折が判明したように満身創痍で戦い続けた選手たちを個人攻撃するのはスポーツマンシップに反すること。野球界は結果を厳粛に受け止めて次なる世界の舞台で巻き返して欲しいが、一昨年春のWBCの優勝がいささか恵まれた印象を拭えないだけに今後日本野球の進むべき道は想像以上に険しいものになりそうだ。
ラストが少々暗くなったので最後にソフトボールの話題を付け加えよう。金メダル獲得までのプロセスは割愛するが、某テレビ局の特集で明かされたエピソードが興味深かった。まずは日本チームが決勝で先発したアメリカのエースの投球フォームを分析して球種によって微妙にフォームが違うことを看破。これが決勝戦の3得点につながったという。また、前日に300球以上を投げて中指のマメをつぶし極限疲労と戦っていた上野投手は、1回裏の満塁のピンチで「神様が降りてきたと思えるほど冷静になれた」と振り返っていたが、この精神力の強さには心を動かされた。このアメリカ戦まで他チームに見せることなく封印していた秘球シュートで凡フライの山を築いたという話からも金メダルに懸ける彼女の崇高な想いが伝わってきた。この番組の取材班には拍手を送りたい。メディアは結果にとらわれたお祭り番組ばかり量産せず、画面を見ているだけでは辿りつけないスポーツの奥深さをもっと紹介して欲しい。スポーツとは人生を教えてくれるものでもあるのだから。
競馬ブック編集局員 村上和巳
◆競馬道Onlineからのお知らせ◆ このコラムが本になりました。 「トレセン発 馬も泣くほど、イイ話」⇒東邦出版HP