・カノヤザクラ ・ステキシンスケクン ・スピニングノアール ・スリープレスナイト ・マルカフェニックス ・レットバトラー
・エフティマイア ・デヴェロッペ ・ハートオブクィーン ・ムードインディゴ ・ヤマニンメルベイユ ・ユキチャン ・レジネッタ
今年の関屋記念はマルカシェンクが勝った。ゴール前では「よっしゃ、祐一、突き抜けろ!」と応援。鮮やかな勝ちっぷりに思わず軽くガッツポーズまでしていた。この馬自身は2005年にD杯2歳Sを制しており、約2年10ヶ月ぶり2度目の重賞制覇となる。デビューしたのは瀬戸口勉厩舎で、昨年春に同厩舎が解散した後は河内洋厩舎に移籍して現在に至っている。2006年のダービーで人気を集めたほどの実力馬(結果は4着)で、私自身もこの馬絡みの馬券を買って応援した記憶がある。あれから2年余、“秋こそは”、そして“古馬になれば”と追いかけ続けたが、その後はなかなか勝ち切れないじれったいレースが続いていた。それでも、個人的には相当なポテンシャルを秘めた馬と注目しており、この1勝を契機に更なる高みをめざして欲しい。
アグネスアーク、ニシノマナムスメ、そしてこのマルカシェンクといった実力馬を擁して幾度となく重賞に挑みながら2、3着に惜敗するケースが多く、なかなか区切りをつけられなかった河内調教師。現役時代にはG1を含めて数え切れないほど重賞を勝っている彼だが、騎手時代と比べると調教師としての初勝利はひと味もふた味も違うものだったことだろう。関屋記念の2日後に電話をかけて「おめでとうございます。次の目標は当然ながらG1奪取。楽しみにしていますからね」と勝手に騒ぎ立てる私に対して、例によって沈着冷静な返事に終始した彼。目先の出来事に一喜一憂することなく泰然と構える彼の姿は騎手時代とまるで変わらない。一気に週刊競馬ブックで河内厩舎特集を組むことも考えたが、マルカシェンクはデビュー時から手がけた馬ではなく、転厩してきた馬。“誇り高き男”の心中を鑑み、残念ながら特集記事は先送りすることにした。
このマルカシェンクを担当しているのは持ち乗りの瀬戸口健調教助手で、この人物には随分前から尋ねてみたいことがひとつあった。カメラマンに週報用のフォトパドックの写真を撮ってもらうと、彼の担当馬の背景にいつも奇妙なモノが映っている。最初に気がついたのはサニングデール(瀬戸口厩舎所属、2004年に高松宮記念制覇)の現役時代のこと。この馬の背景にプラスチック製と思われる小動物や果物などがこっそりと置かれているのだ。最初は偶然かなと思ったが、2回、3回と続いた段階で意図的な演出だと理解した。ちなみに前走の関屋記念時のフォトパドックには黄色いバナナが置かれていたので手元に雑誌がある方には確認していただきたいが、見つけると思わず笑みがこぼれる。この置き物に関しては“正体不明の物体”としてネット上でも話題になっており、小社にも「誰がなんのために置いているのか」との問い合わせが何件かあった。
私――以前から一度聞きたかったことがあります。フォトパドック用に撮影した馬の後ろにいつも置き物みたいなものが写っていますよね。あれはなんのために置いているんですか。
瀬戸口――馬や競馬の写真って、ちょっと真面目すぎるというか、硬すぎる感じがしますよね。それで、ファンの方に親しんでもらえるように、楽しんでもらえるようにと考えてやりはじめたことなんです。
私――そうなんですか。まずは置き物の位置を決めて、それからその前に馬を連れて行く訳ですよね。カメラの位置によっては死角になってせっかくの置き物が写らないなんてケースはありませんか。
瀬戸口――大丈夫ですよ。最近はカメラマンの方も慣れてくれて、「もう少し前じゃないとバナナが入りませんよ」などとアドバイスしてくれるようになっていますから、はい(笑)。
厩舎担当者から電話番号を聞いて思い切って質問したところ上記のような返事をいただいた。突然の電話取材にもかかわらず快く応対していただきありがとうございました、瀬戸口さん。そして、前後しましたが、重賞制覇おめでとうございます。なお、この瀬戸口助手には関屋記念優勝の裏話や河内厩舎の雰囲気などについて改めて正式に取材してもらうことにした。8月25日発売の週刊競馬ブック“マイクでごめん”(取材、執筆担当は三木麻愛)で掲載予定。マルカシェンク並びに置き物ファンの方々はぜひご覧ください。
競馬ブック編集局員 村上和巳
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