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「いやあ、ほんとに久しぶりだよね。元気にしてるの?」
南井克巳調教師と会ったのは5、6年ぶりになる。元騎手だったというプロフィールをここで改めてくどくど書く必要がない人物だろう。この人の記憶で鮮明なのはオグリキャップで勝った1989年のマイルチャンピオンシップ。勝利インタビューの途中にもかかわらず感極まってポロポロと涙を流したあの姿はいかにも飾らない彼らしかった。ストレートな言葉使いと明るい笑顔は現役時代とほとんど変わってはいない。「またジョッキーマスターズをやるんだったら?体調を整えて参加したい。うん、今年は出たいな」と熱っぽく話していたが、その姿を待ちわびているファンも少なくないはずである。
「こちらこそごぶさた。えっ、息子ですか?まだまだですよ」
的場均調教師とはもっと長く会っていなかったと思う。関東と関西にわかれて仕事をしているため、私が現場にいた頃でも顔を合わせるのは関西圏でG1レースが行われる当日か夏の北海道開催ぐらいで、親しい付き合いがあったわけではない。しかし、グラスワンダーを筆頭とする彼のお手馬に好みのタイプが多かったせいか、機をみてはマークして質問を浴びせていた私。物静かで冷静な人だが、返ってくる言葉は簡潔で的確だった。売り出し中の息子勇人クンに会ったことはないが、父親のDNAがどんな風に受け継がれているのか気になる。
「ちょっとは出世して偉くなった?なってないの。そうだろな、やっぱり(笑)」
これは音無秀孝調教師の突っ込み。G1を勝っているとはいっても騎手時代は地味な存在だった苦労人だが、調教師に転身してからは素晴らしい実績を積み重ねている。彼からは2年に一度ぐらいの割合で思い出したように電話がかかってくる。忘れられていないのは有り難いが、いつも突然なのでなにかあったかと構えてしまう。だいたいがそういう人物なのだ。考えてみれば彼が騎手デビューしたときに週刊競馬ブックで新人紹介記事を書いたのがこの私なのだから、あれからどれくらいの歳月が流れたかと思うと気が遠くなってしまう。
3月18日に京都市内のホテルで行われたケイバブック創立50周年記念式典には社命を受けてホスト役で参加。パーティーの合い間を縫って馴染みの方がいるテーブルを順番に挨拶して回ることになったが、懐かしい顔にたくさん出会えた。関西圏の関係者の方ならトレセンや競馬場で会うケースもあるが、関東圏の方の場合は普段に顔を合わせる機会はまずない。柴田善臣、横山典弘、後藤浩輝といった騎手たちと言葉を交わすのも実に久々だった。若い頃はキャピキャピして自由奔放だったあのノリ(横山騎手)がすっかり落ち着いた雰囲気になっているのには感心させられたが、彼ももう40歳。当然といえば当然なのだろう。
パーティーの間は乾杯時にアルコールを軽く口に含んだだけ。さすがに立場を考えてウーロン茶で我慢したが、山野浩一さんほか数名の方と同席させていただいた二次会ではギネス、焼酎、バーボンソーダーを一気に胃に流し込んでいた。“毒舌家”とも称される山野さんだが、その高い見識から生み出される歯に衣着せぬ発言が心地よく、創成期から現在にいたるまでの競馬の歴史など興味深い話もたくさん聞けた。いつもなら最後は泥酔状態になるのだが、この夜は珍しく酒に支配されずに過ごせた。緊張感を最後まで持続できたことが怠惰な本質を隠蔽できたということかもしれない。そのぶん、いろんな方々と会話ができて愉しい一日になった。
「素晴らしい競馬をしている国には必ずといっていいほど素晴らしい競馬マスコミがあるもの」
これはパーティーに出席されたある来賓の方の挨拶の一部の引用だが、その人物が込めているだろう意図も含めて深く耳に残った。今後はこの言葉を肝に銘じて業務に取り組みたい。
競馬ブック編集局員 村上和巳
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