・ドラゴンファイヤー ・ボンネビルレコード ・マイネルアワグラス ・マコトスパルビエロ ・メイショウトウコン ・ロングプライド
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「会員になってくださっているファンの皆さんに失礼だと考えて後輩に(推理のキーの)担当を譲った」と書いたのが先週。その舌の根も乾かないうちにというか、キーボードに打ち込んだ指の感触が残っているうちにというべきか、まあ、そんなことはどうでもいいのだが、数日後には小倉開催の土日の同じコーナーの予想を担当していた私。なんとも無責任のそしりを免れないが、年間五十数週にわたって延々と緊張感を保つのはいまの私には至難でも、ひと開催ぐらいなら克服できるだろうとのゆる〜い判断があってのこと。つまり、今年は同時開催の小倉、中京(2開催)だけ推理のキーの予想を担当しようとお気楽にも勝手に決めてしまった。しかし、やるからには予想者としての残り火を燃焼し尽くそうかと一応は決心。ひとレースを5分で片付ける従来のスタイルを排除して前日の夜から能力表、調教、厩舎談話のゲラに軽〜く目を通した。予想は時間をかければ当たるという単純なものではないが、珍しくもやるだけのことはやってみようかなと考えたりしたのだった。
そして土曜日。9〜11レースまでの予想は3連敗。ロウソクの残り火が燃え尽きたかと思った矢先に12レースの馬連2850円が的中。この日の全投下額が3500円で収支はマイナス650円だったが、格好がつけられたと胸を撫でおろした。翌日曜日は朝から雨。下級条件のレースが多く、大半がフルゲートという大混戦の小倉はただでさえ予想が難しい。それに加えて折からの道悪となるともうお手上げ。戦意を喪失して不貞腐れ気味に見守った9レースだったが、な、なんと出会い頭に予想が勝手にヒット。それも馬連10370円という好配当。「う〜ん、天は我を見捨てず」と訳の判らん独り言を呟くと同時に一気に元気を取り戻した。「このレースが当たるんだったら、残る3レースはパーフェクトだな」といつものお調子モンに戻ったが、以降は3戦3敗。私の本命馬は直線に入ると次々と馬群に沈んだ。現実は甘くなかったが、それでも小倉1週目は8000円ほどのプラスと予想外の幸先のいいスタートが切れた。しぶといというのか悪運が強いというべきなのか……、よく判らん。
1回小倉開催から栗東編集局に在籍する若手記者の足立雅樹と坂井直樹が予想デビューした。この春で入社して丸4年になる同期入社のこのふたりは体躯、性格、仕事ぶりとあらゆる意味で対照的だ。体重50キロと痩身で少年っぽさを残す足立は社交的で人捌きが達者だが、体重100キロが示すムキムキの坂井は年齢より老けて見える重厚なタイプでどちらかというと非社交的。前者が厩舎取材班で後者が内勤の編集員という立場になっているのはごく自然の流れでもある。小倉1週目の予想に関していえば思うような結果が出せていなかったふたりだが、紙面を見る限りでは個性的で歯切れのいい印が目立った。それが独りよがりで空回りばかりしていてはいけないが、それぞれが自分の色を出しているのはいい傾向だと思う。その調子で頑張れ。
競馬の予想というのは前もってレース結果を予測することだが、それをするためには個々の馬の血統、個体、気質を頭の中に整理しておくことが基本。それによって各馬のポテンシャルや適性を推理し、横並びの出走馬に優劣をつけていくものである。しかし、生き物であるサラブレッドは日々変化するため、組み立てた推理と実態には頻繁に誤差が生じる。若駒が短期間に見違えるほど成長して驚かされることもあれば完成期を迎えて絶好調と思われていた古馬が突然体調を崩すこともある。そういった場合の誤差を修正するための参考データになり得るのが調教であり、関係者のコメントでもある。突然ハミを換えたりブリンカーを着けたりする馬にはそれなりの理由があるわけで、様々なファクターに対しても常に敏感でなくてはいけない。
先輩面をして予想についてあれこれ書いてはみたが、何かとキツい我が編集局で4年間揉まれてきた足立や坂井にすればこれぐらいの知識はすでに身につけていて当然。なにより大切なのは日常においてきちんと競馬と向き合うこと、そして、楽しみながら予想をするという気持ちを持ち続けること。目先の当たり外れに悩んだり結果を引きずったりする必要などない。競馬記者としての君たちに時間はたっぷりあるのだから……。こう結んでこの原稿を終えるつもりだったが、これではあまりに型通りで面白味がない。よって最後にふたりに厳しい愛のステッキを一発、二発入れておこう。足立よ、もう少し言葉に対する感性を磨け。文章は簡潔でいいからより正確にな。そのためにはブックログでトレーニングを積むのが一番だ。坂井、君の場合はメタボリックシンドロームとの戦いがすべて。食堂で同席するといつも思うんだが、カレーライスは飲み物ではないぞ。
競馬ブック編集局員 村上和巳
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