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4月1日、中山競馬場に顔を出した。東京駅から船橋法典駅まで行くのに想像を絶する時間とエネルギーを消費したが、これはいつものこと。みっともなくて所要時間はとても公開できない。競馬場に着いてからも専門紙記者席にたどり着くまでにかなりの労力を費したが、これも想定内。中年田舎オヤジというだけでなく、知人にも呆れられる方向音痴なのだから仕方ないが、これまでに中山へ顔を出したのは5回や6回ではない。なにより学習能力が欠落しているのが一番の問題。これだけ成長や進歩という言葉と縁遠い人生を送っている人間も珍しい。
「いよっ、村上じゃないの。いい歳になったってのに相変わらず長い髪してさ、困った奴だな(笑)。えっ、俺?うん、長く入院してたけど、やっと病院から脱出できた。どうだい、元気そうだろ。いまは、土日だけ競馬場に顔を出してインタビューの手伝いをしてるんだ。体を慣らして早く社会復帰しないとな」
記者席でまずは懐かしい顔に会った。声高でアップテンポ、一気にたたみかけるようなその独特の話し方は昔とさっぱり変わっていないが、その表情にはやつれた様子が見え隠れしていた小宮均記者。私が初めて夏の北海道競馬に出張したときには、すでにベテランの雰囲気を漂わせて取材現場も夜の街も仕切っていた彼。どちらかというと古いタイプの競馬記者だが、馬券の勝負強さは群を抜いていた。一昨年の11月に突然入院したと聞いたときは驚いたが、長い闘病生活を乗り越えて現場復帰をめざすその姿には頭が下がる。
数年ぶりに顔を合わせた関東の知人たちとあれこれ挨拶を交わしているとメインのダービー卿CTに出走する馬たちの本馬場入場がはじまる。馬単では4年連続して万馬券が出ているこの重賞は今年も傑出馬が見当たらず大混戦。慌ててバッグから双眼鏡を取り出して各馬を観察したところピカレスクコートの雰囲気がいい。引っ掛かる気性で乗り難しさは目につくが、乗り手が気分良く走らせて能力を引き出せばかなりの可能性のある馬だ。秋山真一郎騎手のお気に入りで望んで中山まで乗りにきたという話も聞いていたので素直に軸はこれと決めた。
「いつも応援ありがとうございます。掛かる気性なので今日はその点に気をつけての騎乗。描いていたイメージ通りのレースができました。うまくいきました」
最終レース終了後に秋山騎手に祝福メールを送った。いつまでも現場にいた当時の感覚を引きずって若い騎手に連絡を取るのは相手に迷惑じゃないかとも考えたが、昔みたいな説教がメインの内容じゃないからいいかなと勝手に判断して送信。上記のような返事が届いた。まあ、返事がくるうちは今後も図々しくメールするつもりでいるが、中年オヤジは歳とともにより無神経で図々しくなるから気をつけろよ、真一郎。それにしても、道中はピタッと折り合いをつけ、直線で巧みに馬群をさばいた好騎乗は光った。
久しぶりに遠征した中山競馬だったが、馬券は11、12レースともに外れ。メインレースは7番人気のピカレスクコートを軸にして馬連で流したが、2着馬も3着馬も抜け。惜しくもなんともない結果となった。ここでも“人気薄を狙うなら総流し”の鉄則を無視して学習能力の乏しさを露呈する形になったが、馬券を買うにあたっていちばん嫌いなのが総流しなのだから諦めるしかない。桜が満開の中山で懐かしい顔に出会い、レースにも熱中できた。財布は薄くなったが、元気で競馬を愉しめることに感謝した一日でもあった。
競馬ブック編集局員 村上和巳 ◆競馬道Onlineからのお知らせ◆ このコラムが本になりました。 「トレセン発 馬も泣くほど、イイ話」⇒東邦出版HP