・ダイレクトキャッチ ・ニュービギニング ・フサイチホウオー ・フライングアップル ・フリオーソ
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ふと考えた。随分長い間この欄で現役競走馬についての話題を取り上げていないことを。1回京都開催が終了したことでもあり、たまには競馬記者っぽい原稿を書いてみようかと思い立った。とはいっても、トレセンの調教には随分顔を出していないし、競馬場には昨年1年間で一度(夏の小倉)出向いただけ。競馬に対して高邁な理念があるわけでもなければ日々を馬の研究に費やしているわけでもない。ただの馬好きオヤジとしての下世話な内容になっており、以下は暇と時間のある方にだけ目を通していただければ幸いである(汗)。 さて、1回京都が終了した。変則日程の7日間開催だったが、背筋がゾクッとするような馬が次々に出現した。誇張抜きに今年のG1戦線で大いなる活躍が期待できそうな馬ばかり。それぞれの馬のレース後の騎手インタビューを紹介しつつ、個人的な印象を付け加えてみたい。 「大物だね。4角からスタンドを物見するようなところがあったけど、最後も追わずにこの勝ちっぷり。折り合いがつくし、素直でほんと乗りやすい。楽しみな馬が出てきた」 ご存知の方も多いだろうが、これは1月20日の京都で新馬勝ちしたオーシャンエイプス(マヤノトップガン×ノーザンテースト、牡、栗東・石坂正厩舎)についての武豊騎手のコメント。芝1800メートルで勝ち時計の1分49秒8はそう特筆できるものではないが、ラスト3ハロン11.6―11.4―11.7という上がりの速い決着にもかかわらず、直線だけで2着以下を8馬身ち切ったのには吃驚。バネの利いた走りでほとんど追うところがなかったのだから凄い。調教量そのものは十分だったが、目一杯の追い切りが一本だけで体も余裕残し。そんな状態でデビューしてこの結果なのだから、これまでのマヤノトップガンの産駒の印象を一変させそうな大物感が漂う。きさらぎ賞(京都・2月11日)に出走するプランもあるようで、次走が真価を問われる場になるだろう。 「稽古で乗せてもらった時から走るなとは思っていた。牝馬にしては素直で、レースでも少し気合をつけただけでグンと反応してくれた。最後は抑える余裕があってこの勝ちっぷり。このまま無事に育って欲しい」 こちらは1月21日に新馬勝ちしたベッラレイア(ナリタトップロード×Baldski、牝、栗東・平田修厩舎)の秋山騎手。芝1600メートルでの勝ち時計1分37秒2は決して速くないが、この馬もラスト3ハロン11.7―11.6―11.3というスローで上がりの速い決着を難なく差し切って2着以下に3馬身の差をつけた。グリーンチャンネルで見た返し馬では伸びやかで素晴らしいキャンターをしていたのが強烈な印象として残っている。管理者がダイユウサク(1991年の有馬記念に優勝)を担当していた馴染みの平田修調教師で、騎乗者が赤帽の頃から知っている秋山真一郎騎手。しかも、現役時代に個人的に思い入れのあったナリタトップロード産駒となれば、ついつい感情移入しがちな私。次走はクイーンC(東京・2月17日)のプランとか。東京まで追いかけて行きたい気持ちである。 「幸四郎(武幸騎手)からいろいろ癖は聞いていたし、厩舎からもジックリ乗って欲しいと言われていたので末脚を信じて乗った。1〜2角で少し行きたがったけど、その後はスムーズに折り合って手応え良く運べた。追ってからの伸びは抜群。まだまだ強くなりそうな馬。これからが楽しみ」 平安Sを豪快に差し切ったメイショウトウコン(マヤノトップガン×ジェイドロバリー、牡5歳、栗東・安田伊佐夫厩舎)にピンチヒッターとして騎乗した石橋守騎手のコメントである。この馬も上がり3ハロン36秒6という、スローな流れを直線だけで差し切ったのだから強いが、驚くべきはその臨戦過程。オープン初挑戦で、しかも2カ月半ぶりという過酷な条件をいとも簡単に克服したのである。暮れにひと叩きする予定だったのが蹄冠部を打撲する誤算があって自重。平安S出走時の追い切りでは完全にバテてラスト1ハロン15秒4もかかっていた。そんな状態でG3を楽勝(着差はアタマでもこう表現していい内容)したこの馬にはかなりの可能性を感じる。 年明けに強い勝ち方をした馬を思いつくままに取り上げてみたが、それぞれに共通するのは内国産種牡馬の産駒であって馬体がそれほど大きくはないという点。このあたりに私の個人的な趣味が出ているような気もするが、その肢体やレースぶりに父の面影が残っている若駒を見つけるとやはり懐かしさがこみ上げてくる。以前のこのコラムで“大型化した現代の競走馬から不要なものをすべて削ぎ落とした理想の姿がディープインパクトではないか”という内容の記事を書いたが、500キロを超える重戦車のような馬よりは軽やかで切れのある中、小型馬に魅かれる。そんな事情もあって今年のG1は上記3頭に大いに注目しようと思っている。
競馬ブック編集局員 村上和巳 ◆競馬道Onlineからのお知らせ◆ このコラムが本になりました。 「トレセン発 馬も泣くほど、イイ話」⇒東邦出版HP