・キネティクス ・スーパーホーネット ・ステキシンスケクン ・ダイワメジャー ・ダンスインザムード ・デアリングハート ・ハットトリック ・プリサイスマシーン ・マルカシェンク ・ロジック
T氏 「もしもし、村上さんですか。私、Tです。実はいま、渋滞に巻き込まれて動くに動けない状態なんです。予定していた原稿が遅れそうなので、まずはその件の連絡をと思いまして」
村上 「了解しました。それはそれで、こちらで対応可能だと思います。それよりもTさん、いったいどうしたんですか。まるで別人みたいに声が枯れていますよ。風邪気味って話してましたが、大丈夫ですか」
T氏 「えっ、風邪を引いたのかって。いえ、違うんですよ。私、ケンタッキー州のチャーチルダウンズ競馬場にいましてね、さっき終わったブリーダーズCクラシックの単勝を当てたんですよ。インヴァソールが大外から伸びてきたあたりから思わず声が出てしまって、それで森進一みたいな声に……」
村上 「な〜んだ、それなら体調面は問題なしですね。心配して損をしたな(笑)。声の印象からすると森進一というよりは、ロッド・ステュワートみたいにセクシーですよ。まあ気をつけて」
このTさんは某出版社の編集長で普段は知的で物静かな人物。そんな彼が馬券を握り締めてゴール前で絶叫するなんてシーンはとても想像できないが、ブリーダーズCを観戦して、しかも馬券まで的中させたというのだから素晴らしい。それにしても、電話での私の締めの言葉「まあ気をつけて」はなにをどう気をつけるのかさっぱり意味不明。相変わらずいい加減な自分自身の応対ぶりには呆れるしかなかった。
N氏 「休みをとってカミさんと一緒に中国へ旅行に出かけてたんだ。おたくはG1の秋だからいろいろ忙しいんだろうけど、年中馬券でやられてばかりいないで、たまにはどこかへ息抜きにでも出かけた方がいいんじゃないの。頭のなかを空っぽにする時間も必要。気持ちは若くても体は確実に老化してるんだからさ」
これは千葉県に住むN氏。出版社に勤める同世代で競馬のキャリアは私を凌ぐ人物である。11月の上旬に電話を入れたが留守だったのでメッセージを入れておいたところ、それに対する返事が上記の内容だった。たしかに年がら年中競馬漬けの毎日で、しかも、頭は古ぼけていく一方。日程的に外国旅行は無理でも、たまには国内のどこかへ出かけて気分転換することが必要かもしれない。ただ、冠婚葬祭に出席してもG1レースの発走時間になるとその場を離れてこっそりとテレビのある場所を探す私。片時でも競馬を忘れるのは難しそうだ。
H女史 「あ〜ら、村上さん。お久しぶりね。そうそう、思い出した、村上さん。あなた、ネットの原稿で私のことを怖い怖いオバサンだって書いたでしょ。こんなに優しいレディーなのに失礼だわよ(笑)」
村上 「えっ、私がHさんを“怖いオバサン”って?と、と、とんでもない。そんな風に書いたなんて記憶はまったくありませんけど。なんですか、言葉じゃなくてニュアンスに出てた?そうですか。ニュアンスとなるとまあ解釈上の違いもありますので……。そういう意図ではなかったとご理解ください、はい」
H女史はオーストラリア在住でなかなか存在感のある人物である。“怖いオバサン”などという認識は決してないつもりだが、国際電話での追求には思わず逃げ腰になっていた。そんな私自身の気の弱さを考えれば、彼女の指摘は決して的外れではなかったのかもしれない(汗)。
オーストラリアといえば、第146回メルボルンCのデルタブルース、ポップロックの激しい叩き合いには熱狂した。世界最高の500万豪ドルの賞金を懸けた国民的な大レースを日本馬がワンツーで決めたのだから、まさに歴史的な瞬間でもあった。凱旋門賞後はいろいろあって競馬人気そのものがすっかり停滞しているが、このメルボルンCがひとつのターニングポイントとなって本来の活力を取り戻して欲しいものである。
競馬ブック編集局員 村上和巳 ◆競馬道Onlineからのお知らせ◆ このコラムが本になりました。 「トレセン発 馬も泣くほど、イイ話」⇒東邦出版HP