・アグネスラズベリ ・ウインレジェンド ・ゴールデンキャスト ・シンボリエスケープ ・テイエムチュラサン ・ホーマンアピール ・ワイルドシャウト
・グラスボンバー ・クラフトワーク ・コンラッド ・ツルマルヨカニセ ・ニシノデュー ・ペールギュント ・マチカネキララ
「初めまして、競馬ブックの村上といいます」(まずは深く頭を下げてそれから名刺を渡す) 「いえ、いえ、初めてじゃないんです。わたくし、以前に3年半ほど関西におりまして、そのときに競馬場を駆け回っている村上さんの姿を拝見してます」(ラジオNIKKEI渡辺和昭アナ)
「初めまして、わたくし、競馬ブックの村上という者です」(同様に名刺を渡す)
「なにが初めましてよ、前に一度会ってるでしょ。そんなことも忘れて挨拶なんかしちゃダメ。アタシはちゃんと覚えてんのに、あなたホントに忘れたの」(ハイランド真理子さん)
冒頭の挨拶からチョンボをしたのは年に一度の懇親会での出来事。社命を受けて昨年から参加しているこのパーティーは5月29日(ダービーの翌日)の夕方に都内で行われた。週刊競馬ブックに執筆していただいているライター、放送関係者、その他の総勢23名に加えて競馬ブックサイドからも10名が参加。それなりに楽しい時間を過ごせた。本来なら接待する側にある立場の私だが、酒が入るとともにハイテンションとなって礼儀を忘れて場の雰囲気を存分に楽しんだのは言うまでもない。
「一年のごぶさたです、石川さん。ダービー号のおもひでの名勝負、楽しく読ませてもらいました。チベットにもお知り合いの方がいらっしゃるみたいですね」
「ああ、村上さん、久しぶりですね。ダービー号のあのチベットの知人の話ですか。あれは流れというかなんというか……、まあ、いいじゃないですか。それよりも、女性たちがそろっているあちらのテーブル席に移動したいと思うんですが、勝手に動いても構いませんか」
豪放磊落にしてオヤジギャグの典型ともいえる駄洒落に天才的な才能を示す石川ワタルさん。昨年に初めてお会いしたが、駄洒落大王とも呼ばれるその人となりを知るにつけてすっかりファンになってしまった。
「その昔、タイムラインというアラブが園田競馬で活躍しました。スマノダイドウも一時代を築いた強い馬でした。あの頃のアラブは強かった。私がまだ関西で競馬を見ていた頃の話です。ところで、最近の週刊競馬ブックを取り巻く状況はどうなのですか」
これは天皇賞の世紀でお馴染みの田島芳郎さん。競馬に対する造詣が深く、その重厚な原稿で人気を集めているライターのひとり。昨年初めてお会いしたのだが、豊富な知識と批評眼の鋭さにはいつも頭が下がる。
他にも“これぞジャーナリスト”と評判の論客・野元賢一さん(一筆啓上担当、日本経済新聞社)を筆頭に、たくさんの人たちと会話できたのはいい意味で刺戟になった。ごく少数ながら私のこの原稿を読んでくれている物好きな方もいらっしゃって「今日は月曜日なので起きて編集員通信に目を通し、それからコンビニで週報を買って村上さんの一筆啓上を読みました。ネットの“鼻の下を長〜くした”という柔らかい話と週報の“番組作成に民意を”という硬い原稿のギャップに笑ってしまいました。どちらが本当のご自身なのですか」という質問には返答に窮した。節操のなさを瞬時に看破されただろうことは相手が浮かべる笑みですぐに理解できたから。
一カ月ほど前に栗東で山野浩一さんに初めてお会いする機会があった。山野さんといえば作家としてはもちろん、文化人としても高名な人物である。私が競馬を始めた頃は競馬評論家としての地位も確立しており、札幌競馬場のゴンドラですれ違ったときには「あっ、や、や、山野さん」とその場に硬直した記憶がある。いわば“山野チルドレン”である私が「初めまして、競馬ブックのむ、む、村上です」と興奮気味に挨拶したところ、「以前にどこかでお会いしたことがありましたかね」と言葉を返してきた山野さん。その悠然とした態度に痺れてしまった。
来年の懇親会ではもう少しゆとりのある立ち居振る舞いをしたいなんて考えてみたりするが、人間性が軽薄ならば器も知れている底の浅い私。まして酒が入ると一気にハイテンション&軽薄オンリーの言動を繰り返して周囲のひんしゅくを買うのは間違いなし。人間の本質なんて簡単には取り繕えないのだ。それにしても、一瞬にして交換した名刺の数が約二十数枚。いまだに顔と名前が一致しない方もいらっしゃる。今度の休日には名刺を順番に並べて記憶の糸をたぐり寄せようと考えているなんともいい加減な私である(汗)。
競馬ブック編集局員 村上和巳 ◆競馬道Onlineからのお知らせ◆ このコラムが本になりました。 「トレセン発 馬も泣くほど、イイ話」⇒東邦出版HP